前項の早稲田桟敷湯に引き続き、鳴子温泉をお送りします。木地業のさかんなところでもある鳴子ではこけしは相当古くからつくられていたそうです。寛永年間(1624~44)に始まったという漆工業や曲げ物とともに貴重な町の産業となっています。
そんな鳴子で十代続く生活雑器、木地玩具、こけしなどの木地物の製造元・高亀さんでこけし見物させていただきました。
高亀さんオリジナル鳴子こけしをはじめ、年代物の張り子人形、土人形などの展示もあり、作り手の人柄やユーモアまでもが感じ取られ見ていて飽きません。
鳴子温泉ではお馴染みの版画家 大野隆司氏のイラストも飾られています。ネコとこけし、そしてあったかい言葉にホッとさせられます。
そして「週間新潮」の表紙絵で親しまれた画家 谷内六郎氏が絵付けした鳴子こけしがスバラシイ。六郎が描く子供のタッチが鳴子こけしに何の違和感もなくマッチしているのが不思議であります。
高亀さんとは交流があったようで、六郎氏が描いたゴキゲンなマッチ デザインの原画やお手紙などの展示もあります。そして高亀さんの包装紙も六郎氏によるものだそうです。
高亀さんのあとに向かったのは共同浴場「滝の湯」であります。この日はコロナ禍で、宿の立ち寄り湯はことごとく断られ、前項で紹介した「早稲田桟敷湯」と「滝の湯」という、王道スタンダード巡りとなりました。
滝の湯の裏側にある源泉槽からは男女の湯殿に向かって7本もの丸太の木樋がぶち込まれておるのです。源泉槽から何も足さず、何も引かず、豪快な引き湯のギミックに圧倒。
江戸時代の開業当時の湯小屋を再現したという湯殿は、総檜造りであります。そして源泉から伸びる木樋から湯船へ滝の如く注がれるという、湯情満点の光景であります。香ばしい硫化水素臭と油臭のある硫黄泉は、まろやかな湯触りです。
帰りに同じく鳴子こけしの「岡崎 斉の店」でコケシ手ぬぐいを購入。昭和レトロなデザインとデッドストック感がゴキゲンです。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2021年11月)
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