長野県から山梨県へと南北30kmにわたって2000m級の峰が連なる八ヶ岳は、夏沢峠を境に北を北八ヶ岳、南を南八ヶ岳と呼びます。北八ヶ岳は苔に包まれた深い針葉樹の森の中に池が点在し、神秘的癒しをみせてくれるエリア。そして南八ヶ岳は赤岳(2899m)を主峰に岩壁の屏風を連ねるアルペン的山容の稜線上には多種多様な高山植物の花が咲き競っています。
そんな八ヶ岳の中央部、夏沢峠の東に位置する本沢温泉は江戸末期の開湯という歴史ある温泉であります。宿の創業は明治15年(1882年)、ハイカーたちで賑わう秘湯は八ヶ岳への登山基地として親しまれてきた山小屋でもあります。
本沢温泉までは、いくつかのルートがありますが、この日はテント泊装備でJR小海線の松原湖駅からバスで稲子登山口まで乗り、そこからスタート。バス停前の大きなお屋敷の右側にのびる私道のような道を進みます。(案内はありません)
10分ほど歩くと広葉樹に囲まれたなだらかな道となり、さらに歩みを進めます。人気が無い道なのか誰とも会いません。
歩きはじめて1時間ほどで、本沢入口に到着。駐車場があり、ここまでは車でくることもできます。
入口には源吉新道と刻まれた碑があります。本澤温泉の初代 原田豊三郎の叔父、原田源吉が八ヶ岳の西側の茅野と東側の小海の約30kmの道を切り開いたという立役者であります。
本沢入口からは、つづら折りの登りや急登な道が現れる登山道となります。
そして歩きはじめて約3時間で本沢温泉に到着。この日で4度目の訪問です。宿には内湯、さらに宿から歩いて5分の場所に野天風呂があり、それぞれ異なる泉質の湯が味わえます。が、しかし、今回コロナ禍のため、内湯「苔桃の湯」は宿泊者のみということで入浴できませんでした。
小屋から3分ほどのテント場(前出イラスト)にテントを張り、早速、野天風呂へと向かいます。
瓦礫が積み重なる荒涼とした谷部にポツンと白濁の湯が張る湯船がひとつ。脱衣場もなく、遮るものは何もないぶっちぎりの秘湯感であります。湯は適温で肌に貼りつくような湯感があり、両手ですくって鼻に近づけると、つぅんと香ばしい硫化水素臭を放つ酸性の硫黄泉であります。
日中はイモ洗い状態になることも多々ありますが、声をかけあって譲り合いの気持ちで。午前中や日没前は比較的空いています(日没後は入浴不可)。
次回、前方にそびえる硫黄岳に登り、八ヶ岳最高峰 赤岳を目指します。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2020年9月)
Comments