前項の「湯田中 渋温泉郷」の角間温泉から角間川のさらに上流へ進み志賀高原へとむかった。湯田中から渋峠を越え、さらに2000m級の山々の裾が入り組んだ志賀高原を抜けて草津に至る「草津道」は江戸時代から物資の流通や湯治客、さらに善光寺詣客にとって重要な往還だったそうです。嘉永元年(1848年)松代藩の佐久間象山(さくましょうざん)が植林計画などのため志賀高原を調査していた折に発見したといわれる温泉が「熊の湯温泉」。手負いの熊が湯に浸かって傷を癒していたことからこの名があるという。
そんな開湯の歴史をもつ熊の湯温泉の一軒宿が1929年(昭和2年)創業の「熊の湯ホテル」。標高1680mに建つ鉄筋4階建て部屋数90室の大規模な宿で、すぐ裏には11月下旬から5月まで滑走可能な「熊の湯スキー場」がそびえ立つ。
フロントの老舗感漂う看板とレジスターに昭和レトロを感じます。
ロビーには熊の湯ホテルの歴史展示コーナー。昭和の木造の佇まいは山小屋そのもの。秘湯感ハンパないです。
フロントロビーに敷かれたゴキゲンなカーペットに釘付け。この柄でセーターでもこしらえたらシャレオツかも。
案内された部屋に用意されたお着き菓子は「栗らくがん」。コスッと噛み崩すと、やさしい栗の甘さが口いっぱいに広がります。落雁に全く興味がない僕でしたが、美味い落雁めっけました。
熊の湯ホテルさんの内湯「檜造り硫黄温泉大浴場」は名のとおり檜をふんだんに使った秘湯の趣がある。近代的な鉄筋造りホテルでありながら、木造の湯小屋を設けて創業時の情緒や風情を大切にしているのがうれしいですね。天井が高く屋根に立派な湯気抜きがついた開放感のある湯殿には美しい緑色の湯が張る10人サイズの湯船。硫化水素臭のある肌触りのやさしい湯は弱アルカリ性の硫黄泉。
まるでバスクリン「森の香り」のような自然が造り出す化学的な色に驚かせられます。湯に身を沈めると湯底に溜まった粉雪のような湯花がスノードームの如く舞い上がります。
バームクーヘンばりの湯口から、やさしく源泉が注がれます。飲泉可能なお湯は苦みが強め。
ドデカイ湯気抜き、屋根を支える太い梁など、檜をふんだんに使ったアカデミックな造りに圧倒されます。
朝日が差し込む湯色はさらにグリーンが映えます。次回、熊の湯さんの露天風呂、食事などをお送りいたします。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2018年9月)