長野県の北東に位置する山ノ内町には9つの温泉からなる「湯田中 渋温泉郷」があります。その中の一つ、角間温泉は古くから湯治場として親しまれ、志賀高原から流れ出る角間川から少し離れた標高800mの高台にあります。山に囲まれ、田んぼや斜面地の畑が広がる集落の中に溶け込む温泉地で、開湯は室町時代の蓮如上人(れんにょしょうにん)が発見したのが始まりとされる500年以上の古湯なのです。
角間温泉は前項で紹介した渋温泉から2kmほど、横湯川と角間川の2つの川を挟んだ高台に6軒ほどの湯宿が点在する小さな温泉地ながら、3つもの外湯(共同浴場)があります。外湯は地域住民で管理され、地元の方はいつでも利用可能で観光客は8時半から16時までの利用となっている。先ずは「大湯」(イラスト↑)檜で造られた湯屋建築は思わず見入ってしまう。じっと眺めていると、なんとなく土偶にみえてくるのは僕だけでしょうか。
外湯はお向かいの黒鳥商店さんで料金を払って鍵を開けてもらいます。写真手前が黒鳥商店さん、右側が大湯。
3人サイズの浴槽はブルーのタイル造りで縁に黒い御影石が付いたやつ。適温に調節されたクリアな湯は鉱物臭があり、よく温まる芒硝-弱食塩泉。角間の湯は昔から皮膚病に効くと云われています。
美しい板張りの湯気抜きを観ながらの湯浴みはオツなもんですね。アカデミックな造りに鄙びが加わったゴキゲンな空間。
すりガラス入りの格子窓から入る光は、ほっこり空間にしてくれます。腰壁に施された石鹸置きも粋です。
格子窓にはエースの刻印の入ったネジ締り錠にも胸キュン。湯もエース級でした。
2湯目に入ったのが「新田の湯」。大湯が集落の中心にあるのに対し、集落の手前側にある湯小屋。こちらも脱衣場との仕切りがない湯殿で、男女の仕切り部分には屋根の補強のためと思われる筋交いが組まれている。コンクリート造りの2・3人サイズの浴槽で飾り気のない造りからジモ専的要素が強い。
外光が差し込むゴキゲン脱衣棚。冬は寒そうです。
クリアな湯だが湯底が変色しているのか、深海のような深い藍色に映る。
脱衣部分のコンクリートの床に埋め込んだタイルづかいに遊びを感じます。
3湯目は、巨石を埋め込んだ壁の上から湯が注がれる「滝の湯」。ジョボジョボ響く滝の音が心地イイ湯殿。
湯気抜きや高窓からの淡い光に心もほぐれてきます。
3つある外湯はすべて同じ源泉なのですが、湯殿の趣きは三者三様、湯巡りし甲斐がありました。湯小屋を移動の都度、快くご同行して鍵を開けて頂いた黒鳥商店さん、ありがとうございました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(2018年9月)