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執筆者の写真きい

銀山温泉 おもかげ湯(山形県)p.110


昭和の国民的ドラマ「おしん」の舞台になったことで全国的に認知された銀山温泉は山形県の中央東端の尾花沢市にある温泉で、宮城県境近く半森山の山懐に湧く温泉地。江戸初期の頃、延沢(のべさわ)銀山に働く坑夫たちが川中に湧く温泉を発見し、疲れを癒すため湯壺をつくって入浴したのがはじまりとされています。最上川の支流、銀山川の清流をはさんで両側に木造三層四層の湯宿が連立するさまは映画のセットさながら。そんな銀山温泉を風薫る5月のある日、散策してきました。


木造三階建てに加え二層の望楼がついた老舗宿「能登屋旅館」の威厳と貫禄に満ちた立ち姿。「おしん」の舞台で主に使われたのがこの宿だそうです。


玄関は大正期の西欧風を取り入れた和洋折衷の佇まい。2階部の湯けむりをイメージした模様の欄干もイカしてます。


温泉街を歩いていて目に付くのが宿の外装に施された鏝絵(こてえ)の数々。左官職人が漆喰で立体的に描くレリーフで、戸袋や看板などに施されている。


能登屋旅館の先祖「木戸佐左エ門」文字と装飾も漆喰で立体的に描かれている。近くで観ると高い技術に驚かされます。


温泉街入口付近の湯宿「古山閣」の外装は「これでもかぁ~!」と言わんばかりの美しい鏝絵の数々。戸袋の館主の名前も立体なんです。往時の左官職人たちの熱いパッションを感じることができます。


僕のハートをロックオンしたのがこの経年劣化による鄙びがたまらない「小関館」。かなりいい出汁でてますが、何年か前に閉館したそうです。


鏝絵鑑賞をしながら温泉街を進むと奥は渓谷美に富んでいて「白銀の滝」を観る白銀公園に出る。一通り温泉街を散策した後、共同浴場で銀山のいで湯をいただきました。


銀山温泉には現在2つの共同浴場があり、今回利用した「おもかげ湯」は貸切の共同浴場という珍しいタイプ。屋根に湯気抜きが付いた湯小屋でいい具合に鄙びたやつ。


おもかげ湯は無人の共同浴場で、橋を渡った向いにある「はいからさん通り」という、中から林家ぺー、パー子夫妻が現れそうな店で受付をする。この店は銀山温泉名物「はいからさんのカリーパン」を売る人気店。ここで貸切料金 50分、4人まで2000円を支払う。


浴場のドアノブにかかる木札を「使用中」して中から鍵をかけて入るしくみ。


脱衣場から数段下りた湯殿には3・4人サイズのコンクリート造りの浴槽があり、壁は白塗りで腰壁部分は板張りが施されたシンプルな造り。ほぼ透明な湯には溶き玉子のような湯花がゆらゆら浮遊する。肌によく馴染む湯は中性の芒硝‐食塩泉でじわりじわりと汗がふき出る。


木箱の湯口からは50℃超えのアチチな湯が浴槽にそそがれる。浴槽の湯が適温だったのは前客が熱かったので加水したと思われる。塩味を感じる湯で湯口に鼻を近づけると仄かに玉子臭を感じることができます。


天井に湯気抜きがついた湯小屋造りで小さな高窓と並ぶ通気口が波模様の透かしブロックが使われているのが粋です。


さらに洗い場のシャワーの蛇口の二股ホースのギミックにシビれます。素朴で控えめな湯殿に愛おしさが溢れます。いつまでも残してもらいたいものです。


帰りに温泉街手前の駐車場にある土産物や食事処などがある「大正ロマン館」でランチを頂きました。


無類のイカ好きの僕が注文したのは山形名物「ゲソ天そば」。ステキなビジュアルで大変美味しゅうございました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2018年5月)

※お知らせです。(株)商船三井さんが運営するWebマガジンで「フェリーで行く湯巡報」と題して連載をさせていただいてます。よろしければご覧ください。近日中に第二回が掲載されるかと思います。https://www.mol.co.jp/casualcruise-sunflower/

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