前項まで2項にわたってお送りした田沢温泉 ますや旅館さん。田沢温泉は長野県の中央部にある青木村の山間にあるこぢんまりとした温泉地で、3軒の湯宿のほかに共同浴場の有乳湯(うちゆ)がある。ますや旅館さんから少し坂を上った場所にある入母屋造りの堂々たる佇まい。中に入ってビックリ、人っ子ひとり歩いていない石畳の静かな温泉街からは予想だにしない賑わいなのです。
天井が高く近代的なタイル張りの湯殿には扇型の10人サイズの浴槽がひとつ。湯口から掘削自噴の湯がとうとうと注がれている。クリアな単純硫黄泉は40℃前後のぬる湯で湯中に無数の気泡が漂い、時間とともに全身に張り付いてくる。モフモフに張り付いた気泡の肌をさするとなんともキモちE。モフモフになった僕のちんすこうのヘアーは海ブドウ状態に。ぬる湯のうえ泡付きがある心地良さ、そりゃ長湯しちゃいます。湯浴み客は皆、目を閉じて悦に浸っているので回転率が悪く混んでる訳です。
4、50代の地元客が湯口からの湯を2リットルのペットボトルに汲んでいたので利用法を尋ねると、毎食後にコップ一杯飲んでるようで、その方のお父様はそれを続けて糖尿病が治ったとの事。そして極めつけはこの湯で淹れるコーヒーが格別だとか、ほんのり茹で玉子のにおいのする湯だが角がとれてまろやかな味になるらしい。温泉で淹れるコーヒー、オツです。
浴槽には田沢温泉2号泉がかけ流され、入口付近にあるかけ湯用の湯溜め槽には古い源泉が使われているようです。
有乳湯の地下にあるショウウィンドウにあった木彫りの看板。左側に貼られた千社札ステッカーは昭和の深夜番組、「11pm」のエンディングコーナーの秘湯の旅のステッカー。ここにもうさぎちゃんが来たんですね。
ますや旅館さんで宿泊し、有乳湯にも入って田沢の湯を心行くまで堪能した。チェックアウト後、大女将の孫にあたるお兄さんに沓掛温泉まで車で送って頂いた。沓掛温泉は田沢温泉から3km.ほど南に行った場所にあり、雨乞いの山として名高い夫神岳(おかみだけ1250 m)の西麓に湧くこぢんまりとした温泉地。ルーツは平安時代にさかのぼる。国司として赴任していた滋野(しげの)親王が眼を患い入湯したところ治ったので薬師堂を建てて温泉守護神として祀ったのが始まりだそうです。温泉裏山の山容が京都の小倉山に似ていることから親王が偲ばれ「小倉乃湯」と名付けられたそうです。
沓掛温泉の共同浴場「小倉乃湯」は地元人の憩いの場。湯の中には綿ぼこりのような湯花が舞う。高いアルカリの単純泉はさらりとしたやさしいやつで35℃の1号泉と39・4℃の3号泉の混合泉。この湯も有乳湯同様、長湯をしてしまう。
御影石の湯口からはとうとうと注がれる。共同浴場の隣には源泉の洗い場があり、野沢菜の採れる時期には野沢菜洗いのため行列ができることもあるそうです。
帰路の上田市に戻る途中に見っけた道路標識。温泉好きの温泉好きによる温泉好きのための標識です。
上田市街に到着後、戦国時代に勇名を馳せた真田昌幸によって築城された上田城の跡地、「上田城跡公園」などを観光した。本丸跡の石垣に建つ櫓(やぐらもん)門(写真)は南北に櫓をそなえた重厚な門。明治の廃城のおり、南北の櫓は山の麓に移築され遊郭として再利用された時期もあったそうです。その後、市民運動で買い戻され再び元の場所に戻ったそうです。
さらに上田駅前にある「みすず飴本舗」でお買い物。あのゼリー状のアメちゃんは上田が本店でした。老舗感たっぷりの有形文化財の店先にはなんとも可愛らしい看板が。
みすず飴(右)は東京のスーパーでも見かけることもありますが、ジャムは初見だったので三宝柑マーマレードをチョイス。買って正解でした。三宝柑の爽やかな甘さが朝のトーストをグレードアップしてくれます。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2018年3月)
※お知らせです。(株)商船三井さんが運営するWebマガジンで「フェリーで行く湯巡画報」と題して連載をさせていただいてます。よろしければご覧ください。近日中に第二回が掲載されるかと思います。https://www.mol.co.jp/casualcruise-sunflower/