前項に引き続き信濃のいで湯、田沢温泉のますや旅館さんをお送りします。「子宝の湯」としても知られる田沢温泉は山姥が湯治に訪れ、鬼退治をしたあの金太郎こと、坂田金時を産んだとか、産まないとか・・・という伝説も。そんな山間の小さな温泉地にぶっちぎりのビジュアルをみせる宿がますや旅館さん。
ますや旅館さんの夕食は床鳴りのする廊下を進んで明治築の年輪を刻んだ飴色の階段を下りた先の食堂で頂きます。
地の食材を生かした山菜料理をメインにドジョウや鮭の揚げ物、
鮭とニジマスのハイブリッド「信州サーモン」と鯉のお造り。見るからに新鮮です。柿色のサーモンはサッパリながらも旨みがしっかりとある。弾力ある歯ごたえの鯉もぷりぷりでとても新鮮でした。
菊芋などの天ぷらやカボチャ餡の茶碗蒸し、
やはり信州、お蕎麦は欠かせないですね。
プンと山椒の効いた鯉のうま煮など、一品一品、きれいな盛り付けで配膳されます。ぐっと満腹になる宴でたいへん美味しゅうございました。
ますや旅館さんには大浴場のほかに貸切風呂もある。フロントにある引き戸から階段を下りた場所に2ヶ所あり、共にこぢんまりとしたタイル張りの湯殿。2人サイズの小ぶりな浴槽に勢いよく源泉が注がれるため、湯触りのやさしいい単純硫黄泉は大浴場の湯温よりも幾分高めである。
小ぶりな浴槽にジョオーッと勢いよく注がれている
ぷっくりと床からミミズ腫れのように浮き上がった浴槽の縁。湯殿の壁、床、浴槽内、さらに浴槽縁ごとにそれぞれ異なったタイルを使った地味に凝った意匠に惹かれてしまう。
松坂慶子主演映画「卓球温泉」のロケ地でもある館内には勿の論、卓球ができる卓球室もあります。
天井の低い乾いた板張りの空間に3台の卓球台が配置されている
なぜか卓球室の壁に貼られていたレトロなグラッフィック。現在の肩身の狭い愛煙家にはほっとするビジュアルとキャッチコピーなのでは。時代の流れをキョーレツに感じます。今は止めましたが僕も通算25年ほど吸ってました
朝食も美味しく頂きました。ご飯のおかわりも数回してご満悦。
朝から贅沢にキノコ鍋も。
石畳に風格ある佇まいは、どのアングルから見ても絵になります。国有形文化財の宿では、いささか経年劣化による建物の傷みを目にします。建物には勿の論、断熱材なんぞ入ってませんから、宿泊した3月でも館内は寒々しかったです。しかしこの宿には往時の匠の業を駆使した木のぬくもりがあります。ぬる湯での湯浴みは湯冷めがしにくく、時間と共に身体がポカポカしてきます。就寝時には中居さんがポカポカの湯たんぽをお布団の中にスタンバイしてくれます。古宿に身を委ね、往時の職人、湯治客、文豪たちを偲ぶステキな時間を過ごすことができました。。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2018年3月)