引き続き飯坂温泉をお送りいたします。前項で紹介した飯坂温泉の発祥の地となる共同浴場「鯖湖湯」のすぐそばに建つ湯宿「なかや旅館」。創業は明治中期に鯖湖湯に湯治に訪れる人々にひとときの宿として提供したのが始まりだそうです。8室ほどのアットホームな宿でこの日は朝食付きのプランで宿泊させて頂きました。
木造二階建ての白を基調とした清潔感のある佇まい
真向いにはレトロな酒屋さんが。屋根上の重厚なグラフィックがイカしてます。残念ながら現在は廃業のこと。
鯖湖湯の湯を引く、なかや旅館さんの湯は男女の内湯で味わえる。出刃包丁の刃のような鋭い形の浴槽は3・4人サイズ。あちちな鯖湖湯の湯をスローなブギで注ぐ湯は出刃包丁のような鋭さはなく、やさしい湯加減。ここでは鯖湖湯で不可能な長湯が可能だ。クセのない無色透明の湯はとろみを感じるような肌触りでじっくり堪能させて頂きました。湯底に小さな穴があり、その穴から浴場の床に湯が排湯されるサイフォン式タイプ。とはいっても浴槽に身を沈めるとしっかりと湯がオーバーフローする。
湯が少量ずつ注がれる浴槽は人が利用していない時間が長いと湯底あたりの湯が冷めてしまうためこのサイフォン式の排湯が適しているのだそうです。(写真↑)右上の湯底の穴と浴場床の穴が繋がっている。
夕食は飯坂温泉の名物を食べに街へ繰り出した。宿から徒歩7・8分、ホテル聚楽の先にある昭和6年創業の老舗食堂「保原屋食堂」さん。
飯坂温泉名物、「円盤餃子」頂きました。ネーミングまんまのビジュアルにニンマリ。これで3人前(一人前7個)。キャベツ、白菜、タマネギ、ニンニク、ひき肉、ごま油などの具材の餡を一晩寝かせて注文が入ってから、一つ一つ包んで焼き上げるという。小ぶりな餃子で皮が「ポリッ」とした軽い食感でスナック菓子のようなエアリーな餃子だ。これほどまでにビールに合う餃子はお初かも。
店内に貼られた酒類のメニュー。一番上の「しょう中あり」に目が止まった。恐らく、焼酎の「しょう」を漢字で書けず、焼酎の「ちゅう」を漢字で書いてみたが、それすらも間違っているというなんともツッコミを入れたくなる素敵なメニュー。好きです、こういうの。
〆のラーメン。観よ!この主張しすぎないスタンダードなビジュアル。出できた瞬間に美味しくないはずがないという絶対的安定感。今もこの文章を書きながら生唾が出てたまらない。
なかや旅館さんでの翌朝、女将さんが部屋に朝ごはんを運んできてくださいました。写真上の小鉢は「いかにんじん」細く切った人参とスルメいかを醤油ベースのタレに付け込んだ郷土料理。ほどよいゆずの香りがあり白ご飯やお酒に合うお味。
やっぱりラストはラジウム玉子(温泉玉子)をオンザライス。ニュルニュルの白身とポックリとした黄身。飯坂の湯が染み込んだ玉子は味に深みを増す。少し醤油を垂らして頂きました。いやぁ、「日本人に生まれて良かったぁ~」と改めて感じる瞬間ですね。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2017年末)