引き続き尻焼温泉の宿をお送りします。草津温泉とひと山隔てた隣に位置する尻焼温泉は草津温泉のような歓楽的イメージは皆無で山間の自然と静寂に包まれた長閑な温泉地。この尻焼温泉の玄関口にあたるのが星ヶ岡山荘さん。以前は「関晴館別館」という宿だったが草津温泉の老舗宿「草津ホテル」が買い取り、昨年の2017年4月に「星ヶ岡山荘」としてリニューアルオープンしたそうです。
正面に緑青葺きの入母屋が付く趣ある外観。周りの景観に溶け込むようなほっこりとした佇まい。
星ヶ岡山荘さんのロゴはあのミスター・ヨガマスター片岡鶴太郎氏によるもの
入浴をお願いしようと玄関に入ると一点に目が釘付けになった。 ん? 見慣れた顔がこっちを見ている。なぜここにおまえが…?フロントに鎮座するのは僕の住む近所のお寺さん、世田谷区「豪徳寺」の招き猫ではあ~りませんか。草津ホテルの御息女でもあるこちらの女将さんが学生時代、豪徳寺辺りに住んでいたとの事でした。ご近所さんだったんですね。
玄関からピカピカに磨かれたなが~い廊下を進んだ先に浴舎がある。男女別の内湯があり共に長笹沢川のへりに露天風呂がある。内湯は天井が高く屋根を支える太い梁が組まれた湯小屋造りの湯殿。6・7人サイズ石造りの湯壺で湯底には美しい色の石敷きが施されている。クリアな湯は弱アルカリ性の食塩・石膏泉で飲泉も可能。湯口からの湯を手ですくって匂いを嗅ぐと仄かに米を釡炊きした時にできる「おこげ」のような香ばしい香りがする。
太い梁組みも見応えがあり、
湯口周りの石には白い石灰質がこびり付き、さらに湯中には細やかな白い湯花が舞う。そのひとつひとつが湯情を引き立ててくれます。
腰壁まではモノトーンのタイル、それより上は暖色系のタイルと陰陽を表現したような意匠
露天風呂へは脱衣場からも内湯からも裸移動が可能で外履きのサンダルを履いて木造りの階段を下りた先にある。川沿いに造られた湯壺は開放感バツグンのロケーション。「造り過ぎてない感」が川との一体感を生み、自然の一部となった露天風呂。セピア色に染まった木々に包まれ、やさしい瀬音だけが聞こえる極上の湯浴みです。
他に貸切の家族風呂や、露天風呂付きの離れの部屋が2つあるそうです。湯殿などは以前のまま改装せず、古い木造の趣をしっかり残したリノベーションに好感がもてます。寛ぎのラウンジの家具選びには女将らしいフェミニンなセンスが光ってました。
これは我が家の玄関に鎮座する豪徳寺の招き猫。このけがれを知らない子どものような表情がイイですね。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2017年11月)