群馬県の北西部に位置する吾妻郡の六合(くに)村は明治33年六つ村が合併し成立した。賑やかな草津温泉からひと山超えた閑静な山里で村のほとんどが山林で占められている。耕地のほとんどが畑地が占め主要農産物として野菜類、花卉、特産物の「花いんげん」などの豆類などの栽培が行われている。この六合村は2010年には同郡の中之条町と合併し吾妻郡中之条町の六合地区と呼ばれるようになった。
そんな六合地区の北部の白砂川の沿いにはいくつかの温泉が点在する。白砂川と支流の長笹沢川(ながささざわかわ)の合流地点にある花敷温泉よりさらに5・600mほど登った場所の山間に3軒の宿が点在する小さな温泉地が尻焼(しりやき)温泉だ。尻焼温泉は長笹沢川の川底から湧出する温泉を堰き止めて設けられた「川の湯」と呼ばれる天然の露天風呂で知られている。
草津温泉の最寄り駅、JR吾妻線の長野原草津口駅からバスで40分、花敷温泉で下車。そこから長笹沢川沿いを上流に10分ほど歩くと尻焼温泉にたどり着く。ホテル光山荘さん手前の橋を渡って少し進むと
川べりに入る案内があり、
そこからさらに進むと簡素な小屋が見える。
川べりに建つ小屋は丸太で骨組みされコンパネで囲われた簡素な造りの湯小屋だ。ゴミ集積場にも見えなくはないが…。
外観から想像どおりの内装の湯小屋には3・4人サイズの石造りの湯壺がある。内壁にカウンター状に造られた棚に脱衣したもの置けるようになっている。適温に調節された無色透明の湯には細やかな茶色の湯花が舞う。新鮮でクッキリ鉱物臭香る湯は胸から腹にかけて泡付きもみられる。
中には注意書きがかかる。地元の人たちで守られている湯小屋です。感謝の気持ちをもって入りましょう。
先客の常連の親爺さんとおしゃべり湯浴みとなった。対岸の崖には小さな滝が見え、ゆったりやさしい時間が流れる。全くもって悪い予感のかけらもない。湯壺のへりに洗面器が2つあるがおもし代わりに湯を汲んでいないと溢れた湯で川に落ちてしまうと親爺さんに教わった。
湯小屋から10歩ほど上流に尻焼温泉の名所「川の湯」がある。湯小屋から裸のまま腰にタオルを巻いて移動した。訪れたのは紅葉も終焉を迎えつつある11月、湯小屋の湯よりは少々ぬるめだが川底の至るところからプクプクと湯が湧いている。川べりには見物に来ていた5人組のおば様と2人組の年配の外国人観光客から視線のレーザービームを感じつつ、ひとり裸で川の湯を彷徨う。腰巻きがはずれ僕のちんすこうが露わにならぬよう慎重にベストポイントを探した。
温度にムラがありつつも寒さを感じることはなかった。この上ないフリーダムを噛みしめ暫し堪能。冷やかしの観客たちは「あったかいのぉ?」、「寒くない~?」と声をかけてくる。おば様たちには「思ってたよりあったかいですよぉ~」と返し、外国人にはサムズアップで返答。
下流側の湯小屋が見えるアングル。昔、地元の人たちは米・味噌・醤油・鍋・釜持参で集まり痔疾や婦人病の患者たちが河原に尻だけ入る穴を掘って患部を湯に浸し療治をしたところから尻焼温泉と呼ばれるようになったとか。みんないいおシリ合いだったんでしょうね。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2017年11月)