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執筆者の写真きい

松川温泉 松楓荘(岩手県)p.86


引き続き松川温泉の宿をお送りいたします。岩手山と八幡平に挟まれた山あいにある松川温泉。3つある湯宿はぽつりぽつりと、徒歩で5~10分ほど離れているのでいずれも静寂に包まれた一軒宿のように思える。その3つの中でも最も古い宿が松楓荘さん。平安中期(1062年)に発見され江戸中期(1743年)に湯治の湯として開湯されたそうです。


木造2階建ての鄙びた佇まいは3つある湯宿の中でもぶっちぎりの秘湯ムードを醸し出す。まさに燻銀的風格。ぼくの中で勝手に有形文化財に指定した。


松楓荘さんのお風呂は玄関からながーい廊下を進んだ先に内湯が2カ所、露天風呂(混浴)が1カ所ある。


まずは内湯の岩風呂。男湯は「松の湯」、女湯は「桜の湯」と名が付く。むかって左奥側からせり出すようにドでかい岩が鎮座する。その岩が男女湯の区切りを成し、それを囲うように板張りで半円形に造られた湯殿。石造りの湯壺には青みがかった白濁の湯が張り、小ぢんまりとした薄暗い湯殿に窓からのやんわりとした光が荘厳な雰囲気を醸し出す。湯に浸かると意外と深めの湯壺で、湯は強い硫化水素臭はあるものの舐めると酸味はほぼ無くやさしい味。肌に刺すピリピリ感は皆無でまろやかな肌触り。


渓流沿いの混浴露天風呂は7・8人サイズの石造りの湯壺。川上から受ける風が心地イイ開放感ある露天。湯口から注がれる源泉が高温のため近づけないように手前に柵が付いている。(写真:手前のバルブの付いた鉄管は加水用)


瀬音ゆかしきワイルドな渓谷で、マイルドな湯に身を沈めるロケーション、たまりませーん


ここ数年、新たに造られたもうひとつの内湯、男湯「だけかんばの湯」と女湯「なゝかまどの湯」は天井低めの奥行きのある湯殿。手前から奥に向かって造られた石造りの浴槽は真ん中で区切られ、「普通」と「温め」に分けられている。でも実際は「普通」が熱めで「温め」が適温といったところ。洗い場にはカランなどはなく、上がり湯用に源泉が流れる木樋が設置されている。


窓を覗くと宿の裏手にある源泉から木樋を伝って各浴槽に配湯されるギミックな手法が観れる


対岸には松楓荘さんの名物でもあった岩肌をくり抜いた洞窟風の岩風呂跡も見える。2014年から2015年にかけて雪崩による土砂崩れ、さらに台風による壊滅的な被害を受け、一部の客室、対岸へのアプローチの吊り橋も崩壊した。対岸の洞窟風「岩風呂」は国立公園内のため国が動かなければ修復工事もできないという。しかし名湯を味わうには十分すぎる宿。大自然の中にある湯宿には大変な苦労があり、こうして我々が快適に自然の恩恵にあずかる事に頭が下がります。


日帰り入浴で温泉玉子かヤクルト付きのサービスもうれしい。湯浴み後、チョイスした温泉玉子は殻が御影石のように黒ずみ、殻を剥くと煮玉子のようなセピア色。パクリとやると温泉成分が黄身にまで深く浸透、仄かなうま味とコクにビックリ。塩も用意されているが先ずは塩を振らずそのままで。


玄関先にある釜で8時間ぐつぐつと煮る温泉玉子には、松川の大自然のエキスと女将さんの愛情が染みわたっていました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2017年8月)

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