山梨県の北西部に位置する甲斐市は2004年に中巨摩郡竜王町と中巨摩郡敷島町と北巨摩郡双葉町が合併してできた。日本三大急流と呼ばれる富士川の上流、釜無川が流れるこの付近は古来より大雨による氾濫が多く戦国時代、武田信玄が当時の土木技術を駆使して堤防築いた信玄堤(しんげんつつみ)が有名である。信玄堤は集落を水害から救っただけでなく、用水路の整備と新田開発を促し農業の発展に大きく寄与した。
そんな水害と共に発展を遂げてきた歴史をもつ甲斐市の旧竜王町域南部の田園地帯に湧く温泉が玉川温泉だ。長閑な田んぼの一角に公民館のような佇まいをみせる地元住民の公衆浴場だ。玉川温泉は信玄が国主となった1541(天文10)年から445年もの歳月を経た昭和バブル期、巷ではマイケル・フォーチュナティの「ギヴ・ミー・アップ」が大ヒットし、竹下内閣発案の「ふるさと創生事業」前後の温泉掘削ブームにのって当時のご主人が1500mもの掘削により毎分119ℓもの湧出量の温泉を掘り当てたそうです。
でっかく貼りだされた効能と禁忌症。シッカリ目を通して、いざ浴場へ
浴場の引き戸を開けると「ザァーっ」と川のせせらぎのような音が湯殿に響く。浴槽から豪快にオーバーフローした湯が床に流れ落ちる音だ。惜しみもないかけ流しに思わずニンマリ。外観のクールな色に反し、白とベージュのタイルにオレンジ色のラインが入った洒落た暖色系のタイル貼りの湯殿。縁が御影石で組まれた5角形の浴槽がふたつ並ぶ。奥の浴槽にはうっすら琥珀色の湯が張り、手前の浴槽はジェットバスで白く泡立つ湯が白濁して見える。琥珀色の湯は40℃前後のぬるめでクッキリと鉄臭あるアルカリ性の重曹-食塩泉。やさしいシルクのような肌触りが実にキモちE。
シャバダバ、シャバダバと小さな浴槽に大量の湯が注がれる湯口。湯口の湯はすでに白っぽく泡立っているのが分かる
浴槽から溢れ出す湯量は豪快で痛快で爽快だ。訪問時、貸し切り状態だったのでオーバーフローの床で寝湯を試みた。嗚呼、キモちE~
洗い場まで流れるぶっちぎりのオーバーフロー。ちなみにシャワーからもカランからも源泉が出る。まさにバブル期に掘り当てた温泉だけに薄っすら肌に泡付きがあり、湯水の如く使われたお金の流れを彷彿とする豪快なかけ流しだ。
ちなみにマイケル・フォーチュナティの「ギヴ・ミー・アップ」は当時、マハラジャの社長、成田勝氏も日本語カバーしている。未曽有の好景気に掘り当てた名湯は田んぼの一角にあります。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。