長野県栄村と新潟県津南町の県境をまたがる秋山郷は東に苗場山、西に鳥甲山(とりかぶとやま)に挟まれた深い谷間が20kmにも渡って続く。これが中津川渓谷である。この中津川渓谷に点在する集落を総称して秋山郷(13の集落)という。「日本の秘境百選」にも選定されるこの地は平家の落人説もあり、さらに中津川渓谷沿いにはいで湯も点在する秘湯の宝庫でもある。今回、長野県栄村の小赤沢、屋敷、上野原、和山、切明の5つの集落を歩いて湯巡りしてきました。
まずは和山温泉の仁成館さん。現在、旅館業としては廃業しているようですが、湯には浸かれるとの情報が得られたので行って来ました。
JR飯山線津南駅方面からのバスの終点でもある和山温泉の集落には3軒ほどの民宿があり(写真↑)、ここからさらに曲がりくねった杉林の道を15分ほど下りきった中津川沿いに仁成館さんがある。到着と同時に繋がれていない二匹の黒い犬が激しく吠えながら迎えてくれた。
仁成館さんには混浴の露天風呂と内湯(男女各1)がある。露天風呂は岩組みされた7・8人サイズの湯壺。湯壺は真ん中で区切られ、手前(湯口側)が熱めで奥側がぬるめとなっている。中津川を見下ろす景観で高度感あり、開放感あり、モハメド・アリ…
しかし、この日は残念ながらあいにくの天気、雲に覆われ前方見える崖の上に鳥甲山(とりかぶとやま)(2038m)の険しい岩壁の稜線までは観ることが出来ませんでした。仕方なく湯壺の先端に鎮座する信楽焼のカエルを見つめていました。湯はクリアでサラリとした肌感の石膏食塩泉。
飲泉も可能な湯で飲むと舌にまとわりつくような微かな塩味を感じる軽い味
内湯は白壁に乱形の石板で腰壁が施され、縁に木組みされたタイル貼りの3・4人サイズの浴槽がひとつ。内湯からも前方の鳥甲山が観られるように大きく窓が取られた湯殿。適温より少し熱めの湯は露天風呂の湯に比べ仄かに鉱物臭がする程度で塩味は感じない。しかし熱めの食塩泉特有の脇下あたりから頭部にかけてジワリと込み上げるような熱伝道を強く感じる。
実は訪問時、女将さんの体調が悪かったため、この日の入浴客は断ろうと思っていたそうです。しかし大型リュックを背負って現れた僕を見て、山から下山してきたのだと思い、汗を流したいだろうと僕の意向を忖度して受け入れて下さった。今回の旅では登山計画は皆無で、キャンプ予定のため大型リュックとなってしまった…。帰り際、麦茶まで頂いてさらに玄関先まで出てくださりお話しまでして頂きました。感謝です。ご自愛のほどお祈りいたします。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。