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執筆者の写真きい

駒の湯温泉(宮城県)p.68


奥羽山脈の中央に位置する栗駒山(標高1628m)は宮城、岩手、秋田の3県にまたがる山。秋には赤く染まった低木がたおやかな山体に絨毯を敷き詰めたようになり紅葉の名所としても有名だ。登山コースも数多くあり、宮城県側の車道(県道42号)の終点、いわかがみ平(標高1020m)からのコースは山頂まで1時間半ほどのショートコースだ。その登山口、いわかがみ平の手前に400年前に発見されたという歴史あるいで湯「駒の湯温泉」がある。

駒の湯温泉は2008年6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震で対岸の崖が崩れ、上流からきた土石流を堰き止め大量の土砂が旅館側に押し寄せ、飲みこんでしまった。その結果、客や従業員ら7人が犠牲となった。

しかし、4年後の2012年には足湯を始め、2015年には小さな湯小屋で日帰り温泉を、さらにその翌年にはそばカフェを始める。「忘れてほしくない」という一心でここまでの復活を成し遂げてきたご主人たちの強い思いに心を打たれました。


ウッディな造りでラティスフェンスがDIY感を醸し出す暖かみのある湯小屋だ


受付を兼ねたプレハブ造りのそばカフェ。対岸の土がむき出しの崖。災害の爪痕が残る


2・3人サイズの湯船がひとつの小ぶりな湯殿だが湯口からの湯量は多く、湯船に腰を下ろすと豪快にオーバーフローする様は爽快だ。温泉好きには眼福の極みである。微かに緑色がかったようなクリアな湯は人肌ほどのぬる湯。湯中には粉状の白い湯花が舞い、肌に張り付くような浴感の湯は弱酸性の石膏硫黄泉。ぬる湯のため湯船から出るとヒンヤリ寒いのだが服を着たとたん、「ジュン、ジュワーッ」と全身に熱がいきわたりポカポカ持続がスゴイ。ぬる湯のもつ優れた保温効果がてきめん。


小さな湯船にこの注入量。小さな湯船は湯の温度を保つためでもあるが浴槽内は常に新鮮な湯で満たされている


正面に大きく取られた窓からは、何ということでしょう…「芽吹きフェス in ブナの森」といったところ。窓枠が額縁となり一枚の絵画を観ているようでまたもや眼福にあずかった


湯が硫化水素型でガス抜きのため湯殿には換気扇のほかに通気口が数カ所とられ更に窓枠の隙間にも通気口を取っている

震災で以前まで使用していた源泉は全て土砂に埋まってしまったが、震災後しばらくすると以前まで使用してなかった高台にあった源泉から再び湯が湧き出したそうです。震災前より2~3℃湯温が下がったが「ぬる湯」を売りに勝負していくとの事。実際、名湯と呼ばれる温泉にはぬる湯が多いのも確かだ。


営業期間4月末~11月初め(冬季休業)入湯料400円という儲け度外視な値段だ。小ぶりな湯殿のため混雑時は入場制限で待つこともあるが、譲り合いの気持ちを忘れずに


(写真:手前が慰霊碑、奥が再開した駒の湯温泉)土砂で埋まった場所は整備され、緑がなくなり殺風景な更地となった。この風景を見ると自然の猛威を痛感せざるを得ないが、それと同時に計り知れない人間の力や無限の可能性というものも痛感した。帰りに7人が犠牲となった慰霊碑の前で手を合わせた。足元にはカタクリの花が春の訪れを告げていた。花言葉は「初恋」だそうですよ。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2017年5月)

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