本気と書いて「マジ」、運命と書いて「さだめ」、微温湯と書いて「ぬるゆ」と読む。微温湯温泉は福島市中心街から西へ約18キロ、標高920m吾妻小富士の東麓に位置する山間の静かな温泉地で入母屋造りの一軒宿、旅館二階堂さんがある。
木造二階建ての年季のはいった存在感たっぷりの外観は明治、大正、昭和にわたり建造され、建物最奥の茅葺家屋は明治30年に建てられたもので今も客室として現役バリバリ。宿泊時、8月の気温30℃超えの福島市街だったが、微温湯温泉は市街地より7℃ほど低く涼しい。
玄関先ではネコが迎えてくれた。バッチリカメラ目線で精悍な目つきがキラリ
江戸中期から湧く微温湯温泉は古くから眼病、皮膚病に効くとして親しまれ、名前の通り「ぬるゆ」にじっくりと浸かる。浴場は宿泊棟から渡り廊下を進んだ先にある。
趣きある湯小屋造り湯殿には5・6人サイズの湯船と奥に上がり湯用のポリ浴槽(真水の沸かし湯)が並ぶ。塩ビ管の湯口から31℃ほどの源泉が湯船に勢いよく注がれる。体温よりかなり低い温度なのでヒンヤリ冷たいのかと思いきや「生温かい」という表現が一番シックリくる温度だ。これに1回、30分から1時間、長い人では1時間から2時間、じっくりと浸かる。「温湯浴」は低温のため心臓や高血圧の人にも負担が低い。はじめは湯温の低さに慣れないが時間の経過とともに湯との一体感が生まれ抜け出せなくなる。
長湯のため目を閉じ瞑想や妄想に耽るもヨシ。読書するもヨシ。しっとりとした湯はクリアで強い酸味と鉄味があり、目の湯というので湯面に顔をつけ目を浸すのだが湯が酸性のため目がかなり沁みる。良薬は口に苦しならぬ、良薬は目に痛しなのか。だが心なしか視界がクリアになり、ぼくなりに玄関先で迎えてくれたネコのように精悍な目つきになったような気がした。湯から上がるとさすがに寒さを感じポリ浴槽に直行したが就寝時には身体がポカポカになってくるのだ。じっくり浸かった後にじっくり効いてくるのだ。
大正時代、麓の薬屋や土産物屋に掲示していたというイカしたグラフィック
渡り廊下から見る宿泊棟。外壁の板張りが長年燻されたような渋い色を醸し出す。奥は茅葺の宿泊棟。昔ながらの湯治場の雰囲気がたまらない。玄関先には沢山もの石楠花が植えられ、花の見ごろは6月ごろだそうです。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。
※旅館二階堂さんの営業期間は4月下旬~11月下旬迄(冬季休業あり)