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執筆者の写真きい

瀬見温泉 喜至楼(山形県)㊸


宮城県の小牛田(こごた)駅から山形県の新庄駅までを結ぶJR陸羽東線は「奥の細道湯けむりライン」の愛称が付けられ6つの温泉駅が沿線に並ぶ。そのJR陸羽東線の瀬見温泉駅から徒歩15分ほど、小国川の豊かな清流の左岸に開けた小さな温泉地、瀬見温泉。源頼朝に追われた弟、義経が奥州に逃れる途中、息子、亀若丸を設けた。産湯探しを命じられた弁慶が愛用の薙刀、「せみ王丸」で突いて掘りあてたのが温泉の由来とされる。


そんな閑静な温泉地にまるで遊郭を彷彿とさせるぶっちぎりのビジュアルで佇むのが「喜至楼」さん。木造3階建の明治元年築の本館を見上げると時間がとまったかのような不思議な感覚に包まれた。山形県内に現存する最古の旅館建築物で時代というフィルターが幾重にもかかった色気ムンムンの佇まいにぼくのハートはロックオン。


正面には唐破風の屋根がつき、雲の文様の鬼瓦と懸魚(げぎょ)が施されている


玄関に入ってすぐ両脇にある客室の戸襖には漆喰彫刻と思われる女将の「いらっしゃいませ、どうぞ」と


「ありがとうございました」の2バージョンが描かれ、下駄箱の引き戸には竹林が描かれなど客を楽しませようとする仕掛けがスゴイ。館内に置かれた調度品なども古いもので、まるで骨董市にでも来たかのように一品一品、品定めしながらお目当ての「ローマ式千人風呂」に向かった。

喜至楼さんの本館には「ローマ式千人風呂」(混浴)、「岩風呂」(混浴)、「あたたまり湯」(男女各1)の3つの浴場があり玄関から左へ進んだ先に集中する。


ローマ式千人風呂の脱衣場の脱衣棚の上には木彫りの「花咲じじい」が迎えてくれる。ビックリ仕掛けに抜かりがない


洋館のダンスホールのような天井の高い湯殿に大小様々な色のタイルで埋め尽くされた異空間に思わず笑ってしまう。その真ん中に直径5mほどの円形浴槽が鎮座し、中央には円柱がそびえ立つ。恐らくイタリアに点在するフォンターナ(噴水)をイメージして造られたものだろう。千人は無理だが20人はゆったり浸かれるサイズ。浴槽内がグリーンのタイルのため、窓からの外光が湯面に差すのと相まって無色透明の湯はエメラルドのように映える。そびえ立つ円柱の腰の高さから沢水が注がれ湯は円柱の付け根の辺り(湯底)から65℃前後の熱い源泉が注がれる。加水はあるがガッツリ汗ばむ食塩泉。湯殿の隅には雷おこしのように石組みされた打たせ湯の湯壺がある。


入口付近のタイルのモザイク画。美女と野獣のモチーフ?モザイク画もステキだが真ん中を走る柱のタイルがパープル系のグラデーションが施され、とってもグー。湯底や円柱のタイルの剥がれや硝子ブロックの割れなど多少のみすぼらしさはあるもののそれよりも当時の館主や匠の湯宿造りに対する熱いパッションとガッツを強く感じる。


[あたたまり湯] こちらの脱衣場には木彫りの金太郎と熊が迎えてくれる。ローマ式なのに花咲じじいや金太郎?このスタイル度外視な和洋折衷に惚れ惚れ。この金太郎、ちょっと器用な小学生でも作れそうなタッチがいい味でてます。


小ぶりな美しいタイル貼りの楕円形のやつ。丸みをおびた縁に首裏を宛がうとシックリくる


〔岩風呂〕 名前どおりのやつ。湯尻が手前の流し側に幅広く取られているため湯に腰を下ろした瞬間、床全体に豪快なオーバーフローが


浴場手前にある洒落た洗面台。いい仕事してます


〔ふかし湯〕ふたつの個室があり床に空いた穴から出る温泉蒸気を患部にあてるようにして温めるお風呂。痔主(ぢぬし)の方にも効くとか効かないとか…

日帰り入浴でも500円という安さで観て浸かれる劇場型の湯宿、喜至楼さん。次回は宿泊で別館の湯殿も堪能し、もっとディープ世界を観てみたい。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(ローマ式千人風呂と岩風呂は混浴の湯殿です。女性への配慮、マナーを大切に。女性専用時間有り)

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