会津を代表する郷土玩具に「赤べこ」がある。その由来は1200年ほど前、会津柳津圓藏寺(あいづやないづえんぞうじ)建立の際、木材運搬に使役された牛が険路のため数多く倒れたが、そのうち最後まで働き通したのが赤色の牛と云い伝えられている。その事から子供が生まれると「べこ」の如く重荷に耐えて壮健であれと「赤べこ」を供え祝うようになったそうな。その圓藏寺のあるJR只見線の柳津駅から車で15分ほどの只見川支流の滝谷川沿いの静かな山間にひっそりと佇む西山温泉。5軒の湯宿が点在する小さな温泉地ではあるが8つもの源泉をもち、近くにはマグマの溜まり熱を利用した日本一の出力を誇る「柳津西山地熱発電所」もある温泉パワーぶっちぎりの村なのだ。
湯宿のうちの1軒、明治32年創業の「滝の湯」さんは西山温泉の8つの源泉のうちの2つを川向かいより引湯する宿。正面に年季の入った入母屋屋根がつく趣きある外観。
滝の湯さんには隣り合わせに2つの浴場があり左側が宿の屋号でもある「滝の湯源泉」が注がれる。(イラスト↑)湯殿は至ってシンプルな造りで3・4人サイズの御影石の浴槽がひとつ。石組された湯口からは高温の湯がジワジワと浴槽へ注がれほぼ透明な湯の中には細やかな茶色の湯花が舞う。若干ぬめりがある湯触りがあり仄かにアスファルトのような油臭がある食塩泉。
右側の浴場には「荒湯源泉」が注がれる。(イラスト↑)隣の湯殿とほぼ同じ造りだが湯は荒湯という名前に反してサラッと優しい湯触り。こちらは小さな白い湯花が舞う硫黄泉で湯口は1mほどの湯路を通って注がれる。その注ぎ口の先端に片栗粉でとろみをつけたような湯花がデローンとへばりつくさまはただものではない湯力を感じた。
裸移動はできないが別に露天風呂もある。目前には滝谷川の流れがひらけ対岸には宿の源泉槽も見える。5角形の石組みされた3・4人サイズの湯壺の露天風呂で湯は荒湯源泉だが内湯の荒湯より湯花が多い。湯口にはそうめんのような細長い湯花が付き湯壺には溶き卵のような湯花がゆらりゆらり。湯から立ち上がるとぼくのデリケートゾーンのヘアーには溶き卵が絡みつく。ひとり両手の小指を使い、すくい取るように除去にいそしむさまはただものではない湯力を感じた。
料理は山菜の天ぷら、地鶏鍋、川魚など地元で採れたものを地元の調理法でとても優しいお味でたいへん美味しゅうございました。付かず離れずの接客で気さくで優しいご主人とソフトな口調で可愛らしい女将さんにも癒されました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。 (訪2016年3月)