前項で紹介した野沢温泉は日本で唯一、村の名前に温泉がついている。(下高井郡野沢温泉村)湯浴みだけではなく調理や洗濯にも使われ村民にとってかけがえのない財産として昔から大切に守られてきた。そんな温泉地に17代続く老舗の宿「旅館さかや」さん。
「さかや」という屋号は代々造り酒屋を営んでいたためだそうです。野沢のシンボル、共同浴場「大湯」の裏手にあり、鉄筋造りの豪壮な佇まいで、玄関先に並ぶBMやメルセデスなどのハイクラスな車がしっくりくる。いまひとつ湯情に欠ける外観ではあるが、宿泊棟の奥には木造の立派な湯屋造りの浴舎建つ。
宮大工による湯屋造りの大浴場「鷹の湯」は天井が高く照明をおさえたムーディな湯殿。20人サイズの御影石の浴槽の手前側に大きな木箱の源泉槽が鎮座する。その源泉槽から3本の竹製の樋が伸び浴槽に注がれ、そのうちの1本は飲泉も可能。浴槽は手前から「あつ湯」、「ぬる湯」そして寝湯が可能な「腰湯」と3つに区切られている。湯はうっすらと白濁し、卵臭がある。加水せず適温にされた湧きたての湯はサラッとした肌触りのアルカリ性硫黄泉。ふんだんに使われた木材の空間はやさしい木の香りに包まれ、のんびりと湯屋造りの構造を観ながらの湯浴みはこの宿の醍醐味だろう。湯殿の奥からは露天風呂にぬけられる。
右奥にはサウナが併設された露天風呂。湯は適温よりやや温めで長湯向き。
野沢の風を受けながらの湯浴みはまた格別。
他に予約制で貸し切りの家族風呂「じょんのび」がある。あのアメリカ、ニュージャージー出身の有名ロックバンドを彷彿とさせるネーミングだが、ご主人のお話では「じょんのび」とはこのあたりの方言で「あー、じょんのび、じょんのび」(あー、ゆったり、ゆったり)という意味らしい。
野沢温泉のダイナミックな「湯」の文字を描いたのはあの世界の岡本太郎さんである。こちらの宿は生前、岡本太郎さんが贔屓にしていたという。宿泊時は連泊されたとのこと。館内のロビーや廊下などには太郎さんの絵や書などが飾られている。ぼくの敬愛する太郎さん。痴がましいとは思いますがこんなん描いてみました。
では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。