遅ればせながらの温泉トレッキング。前項の「高天原温泉」の続きをお送りします。高天原山荘での夜は昔観たスティーブ・マーティンとジョン・キャンディのコメディ映画「大災難P.T.A.」を思い出したほどだった。翌日21日、まだ暗い中、混み合う山荘を抜け出し湯俣温泉向けて出発。(4:30スタート)
スタートはまず高天原温泉「からまつの湯」がある温泉沢から「温泉沢ノ頭」(水晶岳に続く尾根)まで登り詰める。暗い中、ヘッ電(ヘッドライト)点けて、沢の右岸、左岸と幾度と渡渉しながら慎重に進む。
スタートから1時間ほどすると日が昇り、沢の流れも細くなり前方には稜線が見えだした。
沢を詰めると「温泉沢の頭」に繋がる尾根の取り付きに着く。ここから尾根の急登が始まり所々にザレ場があるので落石させないよう注意して進む。
尾根歩きに入るとビビッドな赤に変色したウラシマツツジの葉が。
朝露を浴びた姿は一層、可愛さを増す。
(7:35)3時間5分かけて「温泉沢ノ頭」到着。
するとまるでご褒美の如くかっちょイイ水晶岳の姿が。その奥には槍の穂先も。
かっちょイイ水晶岳(8:45)登頂。
狭い山頂に続々とハイカーたちが押し寄せる。
逃げるように山頂をあとに。水晶小屋に(9:25)到着。ここで50分ほど休息&休足。
水晶小屋(10:15)スタート。ここから湯俣温泉に向けて下山する。
野口五郎岳方面と湯俣温泉の分岐である真砂分岐に(12:00)到着。
ここから湯俣温泉に繋がる竹村新道に入るのだが下っては上るの連続で距離もあり簡単には湯俣温泉には辿り着けない。
南真砂岳付近の紅葉もグー。
真砂分岐から約3時間、ようやく湯俣川が見えてきた
そして湯俣温泉「晴嵐荘」に(15:30)到着。この日、約11時間のトレッキングとなった。
湯俣温泉は標高1500mにあり湯俣川の河原に温泉が自然湧出する場所が所々にあり手掘りの野湯が楽しめるステキな温泉。ここには「晴嵐荘」という山小屋が1件あり、黒い焼き板を羽織った洒落た外観。こちらの小屋には内湯があり日帰り入浴も可能。小屋の向いの河原がキャンプ場になっていて到着後、テントを設営し「チンカチンカに冷えたルービー」をより美味しくいただくため内湯に直行した。
3・4人サイズのタイル張りの浴槽が一つ。清掃用の蛇口が一つ付いているだけでカランなどないシンプルな湯殿。薄暗いが窓から入るやんわりとした外光が心地いい。ほんのりと白濁した適温の湯には細かい湯の花が舞う。くっきりと安心感のある硫化水素臭を放ち、とろみを感じる中性の硫黄泉。浴後は肌がサラッと仕上がる感じ。
入浴後、小屋で値段高めの缶ビールを購入し本懐を遂げた。
ぼくのテントから見た晴嵐荘。小屋は7月~10月中旬までの期間営業。
翌日22日の朝、野湯を楽しむためテントから抜け出し前を流れる高瀬川にかかる吊り橋を渡り遡上する。少しすると川が水俣川と湯俣川の二手に別れ水俣川にかかる吊り橋を渡り、湯俣川沿いにでる。
水俣川にかかる剣呑な吊り橋。錆止めスプレーの吹き付け跡があちこちにあった。
湯俣川に出ると湯けむりを上げる光景が。
さらに遡上するとすでに作られている湯壺が何個かあり、そのひとつに入ったが腰を下ろすとお尻が「アツっ!」ちょっとずらすと「冷たっ!」という具合にとても浸かれるものではなかった。しかしそこからすこし上がった湯壺に先客の親爺さんが絶妙な温度に調節してくれていたありがたい湯壺にありついた。
4・5人サイズの石組された湯壺には端からやんわり源泉が注がれ脇からは川水が少しずつ入るように石で注ぎ口が作ってあり、さらに所々に底からプクプクと湯が自噴している。
湯俣川の断崖の谷にゆったり腰をおろしての湯浴みはこの上なく贅沢な気分だった。
その湯壺からさらに遡上すると天然記念物となっている、噴湯丘(ふんとうきゅう)というものがある。
尖った先っちょから温泉が噴き出している。温泉成分の石灰質などが堆積して盛り上がってできたもの。地球の息吹を感じる噴湯丘(ふんとうきゅう)はまさに奮闘中だった。
湯俣温泉からの帰路は高瀬川を3時間ほど下った場所にある高瀬ダムまで歩かなくてはならない。秘湯と呼ばれる場所からはそう簡単には帰れないのだ。
高瀬ダムは黒部ダムに続く日本で2番目の高さ(176m)を誇るロックフィルダム。東京電力が管理する発電用ダムだ。(ちなみに黒部ダムは関西電力の管理。)高瀬ダムからはバスなどなく、設置されている公衆電話から指定されたタクシーを呼ばなくてはならない。到着時、運よく2人のハイカーとタクシーをシェアでき料金は三分の一で済んだ。タクシーで大町温泉の日帰り入浴施設で汗を流し、その後バスでJR大糸線「信濃大町駅」まで移動し帰路に就いた。色んな人との出会いがあり、充実感、達成感の楽しい3日間を過ごせました。 では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。
※このトレッキングはしっかりとした登山装備が必要です。かなりのロングコースなのでそれなりの脚力も必要です。登山経験の浅い方にはおすすめできません。 ここでのコースタイムは(私の)単独山行での時間です。コースタイムには個人差があるのであまり参考にしないでください。エスケープルートがないので天候悪化などを見込んで必ず予備日とった計画をたててください。