JR陸羽東線「鳴子温泉駅」のおとなり駅、「鳴子御殿湯駅」から徒歩12分ほど、東鳴子温泉地区と江合川を挟んだ対岸にひっそりと佇む静かな湯治宿。5月初旬、旅館の玄関先の庭園には太陽をいっぱいに浴びた石楠花やツツジがイキイキと咲き誇っていた。
赤這(あかばい)温泉、阿部旅館さんには2つの湯殿(手前と奥に)があるのだが「男湯」、「女湯」、「貸し切り」と3つの札がありそれぞれ用途に応じて入口の扉に下げるルールになっている。2つの湯殿は左右反転した造りになっていてそれぞれ泉質も異なる。(イラストは奥の湯殿) 壁、床、浴槽ともそれぞれ異なるタイルが使われた湯殿は、ミント系と暖色系の色の組み合わせから清潔さと暖かみを感じ南面に大きく窓が取られ明るく清々しい。湯は4・5人サイズの浴槽に壁から突き出た塩ビ管の湯口からとうとうと注がれる。
手前の湯殿(泉名:赤這温泉3号泉)はシジミのおすましのようなうっすらと濁りのある湯は適温よりやや温め。つきたてほやほやのアスファルトのような匂いと硫化水素臭、ほのかに鉄臭がある個性的な匂い。白い湯花が舞い、肌に絡みつくような泉質。
奥の湯殿(泉名:赤這温泉1号・3号混合泉)は手前の湯殿の3号泉に比べ匂いはさほど変わらないが鉄臭が強く色も笹黒い。浴後は肌が一皮むけたような感じでしっとり保湿要らず。何度入っても湯疲れすることはない。
こちらの阿部旅館さん、湯の良さもさることながら食事も大変美味しい。家庭的な優しい料理で無駄な派手さがないのがいい。夕・朝食共に食べられる鳴子のブランド米「ゆきむすび」。噛むと奥歯が軽く弾むようなもちもち感があり口の中で甘み広がる。釜炊きなのか、いい具合におひつにオコゲを入れてくれる。旬の山菜、旬の魚、地のものが美味しく料理され箸が止まらない。そのうえ値段がリーズナブル。頭が下がります。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。