恋の病以外なら何でも治す天下の名湯、草津温泉。pH 2前後の酸性の湯は殺菌効果に優れ江戸の頃、湯治場であった草津が梅毒性疾患、いわゆる花柳病の治療場になった歴史があります。当時、漢方の治療法しかなかった日本に徐々に酸性泉が受け入られるようになり、なかでもとくに著しい効果があったのが草津の湯だったそうで、それが人気のきっかけになったそうです。
そして八代将軍吉宗は草津の湯を樽づめにして江戸城まで運ばせ入浴していたという歴史もある名湯なんです。
湯街の中心にある草津温泉最大の源泉、湯畑からメインストリートでもある西の河原通りを進んだ先に今回紹介する湯宿 泉水館さんはあります。
通り沿いに迎門を構えた風格ある佇まいであります。大正初期創業の老舗旅館は2016年にリニューアルオープンを果たし、1日4組限定という寛ぎの宿として生まれ変わりました。そしてこの日は、日帰り入浴で利用させていただきました。
敷地内には江戸時代から湧き続けるという自家源泉「君子の湯」を有し、毎分120ℓという豊富な湯量であります。
宿泊棟の向いに浴舎があり、数段下りた場所が脱衣場と湯殿となった造りであります。
湯を両手ですくって顔にあてがうと、草津特有のつんと酸っぱい硫化水素臭が鼻を刺し、草津に来たことを実感するのであります。君子の湯はpH2.2の酸性湯ではありますが、滑らかさが際立つイイ湯触りであります。さらに湯温もやさしいではありませんか。
高窓から入るアンニュイな光も湯情を引き立ててくれます。
そしてアンニュイな光を浴びる手書き看板は湯殿に箔をつけます。
酸性の湯は金属類を傷める性質をもっているため極力、釘を打たない造りになっていて、板と板の繋ぎは木組みがされています。
約60年前の手書きの温泉分析書がありました。検査方法などの違いはあれど、昔の方が泉温も高く、酸性度も強かったようです。
そして利用した「桐の湯」の隣にある浴場「萩の湯」も見させていただきました。立ちのぼる湯けむりに光が射した湯情たっぷりのお色気空間であります。左右に並んだふたつの湯船は、左が女湯、右が男湯だったそうで、湯治宿だった頃のなごりだそうです。ここでしか味わうことができない歴史の湯を、趣きの異なる3つの浴場で楽しめる贅沢な湯宿であります。是非次回は宿泊で。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2020年11月)
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