和歌山県の北部に位置する和歌山市は、紀伊半島の中央部の大台ケ原に源をもつ紀ノ川の河口に形成されている県庁所在地。江戸時代には御三家のひとつである紀州藩の城下町として栄え、「若山」とも表記されていたという。そんな歴史のある和歌山市の中心街から車で10分ほどの場所に「花山温泉」がある。この地の温泉は1200年前には湧いていたとされる古い湯で歴代天皇が熊野行幸の折に逗留したとも伝えられるが、その後湧出が止まり伝説の湯になっていた。再び開湯したのは1968(昭和43)年、地質調査を行い掘り当てた古湯である。
鉄筋三階建て、白とグリーンの配色が爽やかな佇まいの湯宿。この花山温泉のある鳴神(なるかみ)地区は近畿地方で初めて発見された貝塚「鳴神貝塚」がある。貝や土器、埋葬された人骨などが出土し、縄文時代、継続的に存続した集落であったとされる。出土した貝が海の貝であったことから、当時、和歌山平野はまだ海が広がっており、この鳴神地区も海岸線であったと推定されるのです。
花山温泉の湯は茶褐色に濁る炭酸鉄泉。赤だしのような湯色と浴槽にフルコーティングされた析出物にド肝を抜かれます。温泉が注がれる浴槽は20人サイズで泉温の異なる3つの浴槽に区切られている。
源泉温度が25℃前後で3つの浴槽ではそれぞれ異なる泉温に調節されている。向かって左の浴槽が源泉温度そのままの25℃、中央が41℃に加温された浴槽、そして右奥の一段上がった扇型の湯壺が37℃に加温されている。加温槽で身体をあたためてから源泉槽に入る。初めはヒンヤリと冷たく感じるが、徐々に慣れてくる。煮込み料理でいうところのコトコト煮込んだ後、一度冷ました時に味がより染み込むような感覚を身体で感じる。
湯面には既に結晶化をはじめる湯の花が膜を張っている。
ただれたお尻のような湯口には塩ビ管とビニルホースの2本から注がれる。塩ビ管からは源泉からそのまま引いたもの注ぎ、ビニルホースからは一度タンクに貯蔵した源泉を注いでいるそうです。湯は飲泉も可能ではあるが、にがりのような強烈な塩味にロバート・デ・ニーロのように口がへの字に曲がる。常連の親爺さんはゴロゴロうがいをすると喉にもいいと教えてくれた。
加温槽の湯面に浮かぶ謎の物体。U字型ステンレスの手すりが、湯面に接する部分で湯の析出物が堆積してできたもの。
さらに露天風呂に抜ける階段の手すりもこのとおり。別の惑星に降り立ったかのような造形物。
排水口辺りはジオラマ千枚田状態。析出物は1ヶ月に5cmも積もらせていくほどなので、週一で削っていかなければならいないそうです。
露天風呂もしっかり赤だし色。程よく加温された湯で、前方には庭木が植えられた気持ちイイ露天。
浴槽のへりは、ロッテのエアインチョコレート「霧の浮舟」の断面の如く析出物が覆っている。
脱衣場にかかる暴力団追放と入れ墨お断りの札に目が止まった。「入れ墨お断りします」の右に書かれた「タッウ」って・・・?かなり発音しにくいですが、恐らく「タトゥー」だと思います。ちょっとカワイイ誤字にほっこり。
関西最強といわれるコッテコテの炭酸鉄泉を堪能した後、向かったのは和歌山市内で人気の中華そば専門店「井出商店」さん。
小ぢんまりとした店内。目に鮮やかな赤いデコラ貼りのカウンターに早寿司(サバの押し寿司)と巻き寿司が鎮座する。
注文した「中華そば」。チャーシューで覆いつくされた美しいビジュアルは垂涎もの。
カウンターに置かれた早寿司をひとつ取って頂きました。濃いめのスープを早寿司のやさしい酸味が口の中で絶妙な調和を奏でてくれます。カウンターに置かれた寿司や玉子は「正しく申告」が和歌山スタイルです。大変美味しゅうございました。
食後は和歌山のアーケード街「ぶらくり丁」をぶらぶら。ぶらくり丁は170年以上もの歴史があり、その昔、呉服や古着を吊り下げて販売する商店が形成され、紀州の方言で吊り下げることを「ぶらくる」ということからその名が称されたようです。現在、シャッター商店街な雰囲気は否めないが、昭和特有の寂れや微妙な如何わしさがとてもゴキゲンな繁華街。
そんな中、「やさしい娯楽・スマートボール」と書かれたキャッチコピーに惹かれ、スマートボールとしけこんだ。
ズラリと並ぶスマートボール台。100円を入れると昭和のエロ本自販機のようにブーっというブザー音とともに硝子板の上から白い球がゴロゴロ飛び出してくる。レバーを引き玉を打って数字の書いた穴に玉が入るとその数字の数だけ玉が出てくるという単純な遊びだが、これがなかなか難しい。
レトロなギミックに五感がビシビシと刺激され、なんともハッピーな気分。1000円ほどつぎ込んで遊ぶまさにやさしい娯楽です。花山温泉からスマートボールと、温泉情緒たっぷりなゴールデンルートを満喫しました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年3月)
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