前項に引き続き肘折温泉で利用したお宿、亀屋旅館をお送りします。約一万年前に起きた火山噴火によってできたカルデラの大地に形成された肘折温泉。銅山川の右岸にみやげ物や木造の湯宿が軒を寄せ合うようにして続く道は、浴衣姿で下駄を鳴らして歩くピッタリなロケーションであります。そんな肘折温泉発祥の湯と伝わる共同浴場「上の湯」の並びにある亀屋旅館さんは、肘折の街に溶け込むように佇む湯宿であります。
玄関には初代の名前とおもわれる表札と亀の甲羅を使って書かれた「亀屋」の看板がかけられています。このノリで「鶴屋」や「虎屋」の看板を造ったらチョット怖いかも・・・。
大正時代の亀屋の写真もありました。茅葺の風格ある佇まいであります。
到着後、女将さんに部屋まで案内して頂いたのですが、どうやら僕を案内するはずの部屋と違う部屋を案内してしまったようで、恥ずかしかったのか急に女将さんが笑い出したのでこちらもつられて笑ってしまいました。リアクションがとてもお茶目な女将さんです。
亀屋さんには混浴と女性専用の2つの浴場があるのですが、この日は宿泊客が少ないので、女性専用も鍵を閉めてお使い下さいとのことでした。
混浴の湯殿は共同浴場「上の湯」と同じくお地蔵様が見守ってくれています。そして湯口からは上の湯と同じ「きずの湯」が浴槽に注がれます。
上の湯の湯よりも濁りが強めで、鉄臭のある湯を口に含むと出汁が効いた塩味でお吸い物に近い味です。適温に調整された弱酸性の重曹-食塩泉は肌に貼り付くような湯触りで極楽です。さらに浴槽が浅めなので、浴槽の縁に首裏をあてがって脚をで~んと伸ばして浸かると思わず喘ぎ声を発してしまいます。嗚呼
上の湯のお地蔵様に比べるとかなり抽象的ビジュアルで、目がいっちゃってます。小さい方の浴槽の「あったまり湯」は少し熱めで、大きな違いはないものの「きずの湯」と比べ、濁りや鉄味がまろやかです。
亀屋さんの夕食は、女将さんが部屋まで運んでくださいました。青ミズやワラビなどの山菜料理から馬刺しやうなぎの蒲焼というバラエティーに富んだラインナップに思わずニンマリです。
キラキラの馬刺しは、すりおろしたニンニク醤油で頂きました。程良く脂がのった馬刺しは噛むほどに肉の旨みが口の中で染みわたり、のどごしもバツグンなんです。
お銚子一本追加のゴキゲンな宴です。
うなぎの半分は白飯の上に乗せて、〆の丼ぶりにして頂きました。大変美味しゅうございました。
精がつく夕食だったのか、スッキリと翌朝を迎えました。朝から「きずの湯」と「あったまり湯」でいい汗流した後の朝ご飯。好物のしそ巻き、ツルムラサキのおひたし、納豆、シャケという素敵なラインナップです。
一泊でしたが、ふたつの湯と自然体でやわらかい人柄の女将さんに心底癒されました。写真の左手前の白い建物が共同浴場「上の湯」、その奥の「熱烈歓迎」の赤い看板が亀屋さん。このアングルの70年程前はこんな世界が広がっていたようです。
左手前の3つの入り口にそれぞれ屋根がついた建物が共同浴場「上の湯」、その奥の茅葺の木造二階建てが亀屋さん。降雪を流すための流雪溝らしきものが、道の真ん中を走っています。これぞ湯治場という感慨深い写真ですね。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年7月)
Comments