未曽有の事態も自粛から自衛へと新しい局面を迎えます。うつらぬ用心、うつさぬ気配りを念頭に、いつかまた楽しい温泉旅行ができる日を楽しみに更新を続けます。
江戸時代、「西の伊勢参り、東の奥参り」といわれ、あの「お伊勢参り」とともに人気を博した「出羽三山参り」。その出羽三山の主峰 月山(1984m)の麓、かつての火山噴火によって形成された直径約2kmのカルデラ(窪地)の底に位置する肘折温泉は山形県の北西部にある温泉です。この温泉は出羽三山で修行する修験者によって温泉街が形成され、出羽三山への参詣者の「湯ごり場」(湯で身を清める事)として栄えてきました。
山形新幹線新庄駅からバスで55分、日本三大急流のひとつ最上川を渡り、単調な山間地帯を暫し走っていると、突として眼下に街が現れるのです。カルデラの底に街が形成されているのが如実に分ります。
そして温泉街の真ん中にある肘折のシンボルでもある共同浴場「上の湯」。きずに効くとされ、別名「きず湯」とも呼ばれる。(前出イラスト)。
ゆったり15人は浸かれる石造りの浴槽の脇にお地蔵様が祀られている湯殿です。湯に浸かるとおのずとお地蔵様の方を向いてしまいます。まるでお地蔵様にやさしく見守られているかのような安心感のある湯浴みです。
しじみのおすまし程度のにごりがあるお湯は弱酸性の重曹-食塩泉。口に含むと鉄味があり、ほんのりしょっぱいお湯です。肌にしっとり染み入るような湯であります。
御影石は湯に含まれる鉄分で茶褐色に色付きます。
シャワーやカランなどの設備は一切ない、昔ながらの共同浴場には上がり湯が備わってまいす。
脱衣箱に書かれた芭蕉の句にほっこりです。いたずら心を忘れない老人、ステキです。
この日は上の湯の並びにある亀屋旅館に宿をとり、部屋に荷をおろして街を散策。
みやげ物屋では目に鮮やかなこけしに足が止まります。肘折こけしをはじめ、鳴子や木地山などのみちのくこけしたちの夢の共演。
上の湯の向いに建つ日本秘湯を守る会の宿、「丸屋旅館」さん。看板のグラフィックにうっとり。立体感や色使いに老舗の風格を感じます。
旧肘折郵便局舎の向いにある酒屋とみやげ「カネヤマ商店」さん。店先の「角打ちできます」の文字に吸い込まれるように入店。大正時代創業の地酒を中心にみやげや日用品を扱う店として湯治の暮らしを支えてきたお店であります。
お店の左側に設けられた小さなカウンターが角打ちスペースとなっていて、そこで頂いた日本酒利き酒セット500円。地酒の「花羽陽」と並んで鶴岡の大山「出羽燦々」、鳥海山の伏流水を使った「杉勇」(すぎいさみ)をチョイス。利き酒グラスに注がれたヒンヤリ感のビジュアルに思わず生唾ゴックン。それぞれに米の旨みと日本酒特有のフルーティ感を楽しめました。
おつまみの「酒盗クリームチーズ」と共にチビチビやりながら、若旦那と県内のからのお客たちとのおしゃべりでゴキゲンな角打ちとなりました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年7月)
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