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執筆者の写真きい

熊野古道 第四章(高野山から那智大滝ロングトレイル)p.153


イラスト:果無峠の中腹に位置する熊野古道小辺路(こへち)沿いの小さな集落で近年「天空の郷」とよばれ、のどかな里山風景に癒されます。









前項に引き続き、古道歩き3日目をお送りします。2日目の夜、へろへろになりながら十津川温泉に到着。民宿「松乃屋」さんに宿泊(素泊り)し、3日目の朝を迎えました。前夜の湯浴みに続き、翌朝早朝からも入らせていただきました。









屋上の露天風呂は爽快です。十津川温泉は二津野ダムによってできた湖に沿って開けた温泉であります。熱めの含食塩重曹泉の湯は肌をしっとり潤してくれます。十津川の湯で前日までのバッキバキの身体はパッキパキぐらいには回復。









前日の足裏の皮のめくれと膝の痛みで心身共に衰弱し、宿にもう一泊して一日休む事も考えましたが、宿の女将さんに別れを告げ、3日目も歩くことにしたとです。(9:00amスタート)上空ではトンビとカラスの攻防戦が繰り広げられていました。









この日は先ず、小辺路3つ目の峠越えである「果無峠」を目指します。十津川温泉から登山口へ向かう途中にかかる長い吊り橋を渡ります。股間がスースーするやつです。中央付近にさしかかると揺れが発生、スースーはマックスとなりヒューヒューと牧瀬里穂と化す。









登山口からは苔むした古道の風情残る石畳の急登が続きます。








登山口から30分ほど登りつめると果無集落につく(前出イラスト)。見晴らしのいい昔ながらの佇まいの集落であります。









湧き水が注がれる生簀には大きな鯉が三匹。









かつては茶屋を営んでいたという民家の庭先を進みます。









丸太をくり抜いた水場には花が生けてありました。










道端に咲くコスモスから元気をいただき、和やかな里山の景観に心洗われます。









集落を抜けると第30番観音石仏に出合う。西国三十三体観音石像(前出イラスト)は本宮町の信者によって祀られたもので、ここから八木尾までさまざまな姿かたちの素朴な観音像が迎えてくれます。









集落から約1時間で茶屋の住人が雨水だけを頼りに稲作をしていたという「天水田跡」につく(11:00am)









さらに山口茶屋跡を経て1時間ほど進むと観音堂に到着(0:00pm)膝痛のため暫し休憩。









観音堂には水場、トイレもあるので、テン泊敵地でもあります。









第18番観音石仏の癒しのポージング。










観音堂から50分ほど登りつめると標高約1070mの果無峠に到着(0:50am)。この山には年の果ての12月20日のみに現れる妖怪がおり、そのときは峠を行く人が無くなったことから「果無(はてなし)」の名がついたとか。









峠をあとに八木尾に向けて下山開始。峠から20丁を表す丸い標石「二十丁石」を経て、凛としたお姿の第13番観音石仏に挨拶を交わしさらに進む。









「三十丁石」手前では本宮側の視界が開ける。眼科に熊野川が蛇行する。









「三十丁石」からは急勾配の下りとなり、膝の痛みはピークを迎えます。痛みで口は「への字」に変形、ロバート・デニーロ顔で国道168号に合流する「八木尾バス停」に下山(15:50pm)。








さらに熊野川沿いを2kmほど歩いた場所にある道の駅に着いたのは(16:30pm)。膝の痛みで距離が稼げず、かなりのオーバータイム。本宮まで残すところあと3kmという時、道の駅のベンチで座っていたところ、地元人らしき親爺さんが声をかけてきました。親爺さんの話では、熊野本宮の参拝は17時までという。今から歩いても間に合わないので、参拝は諦めようと思っていたその時、「車で送ってやろかぁ」と親爺さん。


まさかこのコロナ禍で見ず知らずの僕を車に乗せてくれようとは。男前すぎます。そしてなんとこの親爺さん、熊野本宮の宮司と同級生だという。ねっとりとしたダミ声が特徴の親爺さんのしゃべりは、関西のベテラン芸人「大木こだま・ひびき」のこだまさんと瓜二つ。そんなこんなでどうにか参拝時間内に本宮にくることができたとです。チッチキチーっ!









山中、誰とも会わず、膝痛に顔を歪め、心身共にへろへろなところに、親爺さんの優しさは活力となりました。まさにここは「甦り・出発の地」であります。参拝後、この日の寝床、川湯温泉のキャンプ場に向けて再び歩きはじめました。








辺りは既に暗くなり、時折り真横をすり抜けるでかいトラックに注意しながら、国道をひたすら進みます。川湯温泉までの道に案内も乏しく、本宮近くの商店で聞いたとおりに歩いていたのですが、途中不安になって改めてヘッ電を装着し、地図を広げて見ていたところ、1台のワゴン車が停まって助手席の窓から少年が「どうされましたぁ」と僕に声をかけてきました。


川湯温泉のキャンプ場の道を尋ねると、「どうぞ乗ってください」と言うではありませんか。驚いたことに車内は運転する少年のお母さんと少年の二人だけ。暗い中、見ず知らずの大型リュックを背負ったオッサンを乗せるという勇気と親切心が染みた。

川湯温泉のキャンプ場に到着したのは(18:20pm)。この日、十津川温泉から約18kmを歩きました。遠くに一組のキャンパーがいる程度の真っ暗で、だだっ広い芝生の上にポツンとテントを張り、本宮近くの商店で購入した茶色い食べ物とビールで乾杯し、古道歩き3日目を終えました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。次章につづく。(訪2020年10月)





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