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執筆者の写真きい

熊野古道 第六章(高野山から那智大滝ロングトレイル)p.155








引き続き古道歩きの最終5日目をお送りします。前日の夜、地蔵茶屋跡に到着し、小雨の降る中、休憩舎前にテントを張り、横になったのだが疲労続きで耳までも不調をきたしたようで、増水で近くを流れる川のグォーッという激しい音が耳の中でドンドコドンドコ反響してなかなか眠りに落ちずにいると、今度は深夜に大雨が降りだし、テントに叩きつける雨音はショパンの調べとはならぬデスメタル。












そんなこんなで一晩中眠りに落ちることのないまま、5日目の朝を迎えたのであります。古道歩き残すところあと約10km、ぱらつく雨の中、那智大滝めざしてスタート(725am)。休憩舎の向いには東屋とトイレもあります。間には文明の賜物も。










舗装道を暫く進んで山に入ると、雨続きで石畳の道は川のように水が流れています。










順調な膝痛の継続をみせる中、足裏の皮が広い範囲でめくれ地面に足をつくたび痛かとです。そんな中、時折り飛び出してくる沢ガニやカエルを、踏みつけないように無駄にステップを踏むと激痛が走り、口(くち)がへの字のデニーロ顔から大口(おおぐち)を開けたジム・キャリー顔に変貌。顔面で二大ハリウッドスターが共演。









舟見茶屋跡手前の八丁坂の急登は「亡者の出会い」と呼ばれ、山中で行き倒れた者の悪霊、「妖怪ダル」にとりつかれると意識がぼんやりして歩けなくなるというのだが、そもそも既に疲労困憊でぼんやりしていた僕にはなんの問題もなく通過しました。(9:17am)。









舟見茶屋跡を経てさらに50分ほど歩みを進めると地元で「馬つなぎ」と呼ばれた登立茶屋跡に着く(10:10am)。









杉木立の石畳の下り道になり、さらに進むと「熊野道」の石標が立つ場所に降り立つ。ここから那智高原となり、トイレや自動販売機がある(10:50am)。









明るく開けた那智高原を縦断するようにすすみ、










ふたたび杉木立の石畳の道となり、つづら折りに下ります。ここまで来るとゴールも近いのか、ゴォーっという滝音が聞こえてくるではありませんか。もう気分は「はじめてのおつかい」のラストシーン。半ベソかきながら重たいレジ袋を引きずって歩くちびっ子状態。「🎵しょげないでよベイベ~」と近藤房之介のハスキーボイスを胸に歩き出す。









そして那智高原から下ること30分、那智大社の鏡内に降り立つと、目に鮮やかな朱塗り三重塔と並んで、霧から浮かびあがる直瀑の姿が(11:35am)。ここからさらに何段もの石段を下って滝下にある別宮飛瀧(ひろう)神社に向かいます。








そして拷問のように続く石段下りを制し、よれよれのおじいちゃん状態でゴールしました(12:00pm)。天から落ちてくるような大瀑を前に、高野山から無事到着できたことに感謝の意を込めて手を合わせました。まるで紀伊山地に降った全ての雨水がここで注がれているかのような凄まじい水量に感無量であります。ありがとうございました。








この那智大滝のある別宮飛瀧神社は、大滝そのものをご神体とするため本殿がないのです。

神聖な大瀑の前に立ちすくむ僕はしばらくの間、降りかかる滝のしぶきを感じていました。その後、那智大社の拝殿に移動、手を合わせて5日間の古道歩きを終えたのです。








そして古道歩き5日目の最終日、予約をしていた南紀勝浦温泉ホテル浦島に行くためバスでJR紀伊勝浦駅へ移動。やはり旅の最後は温泉で〆たいですから。






南紀勝浦駅から徒歩5分、勝浦港の桟橋からホテル浦島までカメの送迎船が迎えにきてくれるのです。苦難続きの古道歩きの後に見るあまりにゆるいビジュアルに戸惑いながら船内に乗り込みます。








ホテル浦島は、熊野灘に突き出した狼煙山(のろしやま)半島に本館、山上館、なぎさ館、日昇館の4館で構成された巨大リゾートホテルでございます。(写真:左下が本館、右上の山頂に建つのが山上館)








そして到着後、更なる試練が待ち受けていました。次回、最終章としてホテル浦島さんをご紹介します。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2020年10月)





この高野山から那智大滝の100kmを越えるトレッキングを僕は4泊5日の工程で歩きましたが、1週間ぐらいの工程で歩くことをお勧めします。今回、初日から膝を痛めるというハプニングに見舞われ、後の4日間も痛みで距離が稼げず、(自分と向き合う旅)なんていう寒いことをいう輩は嫌いなんですが、しんどさのあまり否応なしに自分とのコール&レスポンスを繰り返すという、かなり寒い旅になってしまいました。そんな中、人から受けた感慨深い言葉、はっとさせられた言葉、そして親切心が励みとなって、無事ゴールする事ができました。各々の体力に合った工程で、各々のステキな古道歩きができること切に願います。

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