未曽有の事態真っ只中ではございますが、普段通りの生活が可能になり、再び極上の湯浴みができる日を楽しみに更新します。
前項の「百沢温泉」に引き続き、今回も津軽の名湯を紹介します。津軽平野の中央に湧き出したかのようにそびえ立つ岩木山。古くから津軽の人々の恵みの根源として崇められ、地元では「お山」、「お岩木様」と呼ばれ、津軽平野のどこからも見ることができ心の拠り所ともなっています。先ずは、そんな津軽地方の浪岡町にある「浪岡駅前温泉」はJR奥羽本線の浪岡駅近くにある温泉銭湯。
地下800mから湧出する湯は、愛用カップに紅茶のティーバックを落とし入れ、湯を注いだ際、急な電話で「あら~っ、久しぶり~っ」なんて相手と話し込んでしまった後、我慢していたトイレで用を足し、ふと紅茶をいれたのを思い出したころには時すでに遅し、あのドス黒く染まった紅茶と同じ色をした湯は、神経痛リウマチ、美肌に最も特効のある湯だそうです。
浪岡駅から人っ子ひとり歩いていない殺風景な道を100mほど歩いた右手に浪岡駅前温泉はあります。
番台のご婦人がにこやかに迎えてくれました。そして「長湯しすぎないよう気をつけてくださいね」と注意を頂き、男湯へ。脱衣場と湯殿の境の硝子戸にはカッティングシートで施されたリンゴのラインがカワイイです。さすが林檎の産地であります。
ドス黒い湯で満たされたⅬ字型の浴槽は5・6人サイズ。凛々しい顔立ちのライオンのお口から放たれる熱めの湯はアルカリ性で軽いローション系のヌルヌル感のあるキモちイイやつ。泉質は溶存物質の総量1000mg/Lを越えていますが、単純泉として扱われているようです。
浴槽が黒いタイルなので湯色が分かりにくいですが、湯の中のタイルの白い目地の色を見ると分かると思います。黒い湯は仄かにうちたてのアスファルトのような油臭と硫化水素臭を放つ保温効果がスバラシイ湯であります。
なんて男前な湯口なんでしょう。キアヌ・リーヴスばりの凛々しさを感じます。
高い湯気抜きの天井で広々とした湯殿は、白い壁と黒い湯のコントラスが目に鮮やか。
脱衣場でみつけたライヴ告知。アコースティック・ライヴではなく、「ギター1本弾き語り!」ってところに熱いパッションを感じずにはいられませんでした。
熱い湯と熱いパッションを全身で受け、浪岡駅から弘前を経て弘南線で黒石方面へ。次に向かったのは、平川市にある温泉銭湯「新屋温泉」。
弘南線の平賀駅から車(循環バスも有り)で10分ほどの住宅地に湧く地元住民で賑わう温泉銭湯。
湯殿の中央に鎮座する7・8人サイズのタイル張りの浴槽には目に眩しいほどのエメラルドグリーンの湯が満たされています。浴槽の中央にある湯口からはチョコレートフォンデュの如く絶え間なく注がれます。
営業前の入れたての湯は透明だそうですが、時間ごとに白濁、そして緑色をおびた湯に変化するそうです。訪問時は絵の具を溶かしたような淡いグリーンで眼福にあずかりました。
ふんわり硫化水素臭のあるアルカリの湯は、含食塩-芒硝硫化水素泉でやさしい温度とともにヌルヌルとした湯触りが極上。さらに時間が経つにつれ肌への泡付きが多く極楽的要素いっぱいです。
湯は緑色だが、オーバーフローする湯の温泉成分で、白いタイルが茶色に変色。湯にヌルヌル感があり、床が滑りやすくなっているのでご注意を。
たっぷりと湯を堪能した後、番台のご婦人が青森の温泉話を聞かせてくださいました。なかでも冬の下風呂温泉で味わうアンコウの話は垂涎ものでした。湯と同じく柔らかいトーンで話すステキなご婦人でした。ありがとうございました。
新屋温泉を後に弘南線でさらに黒石へ移動。黒石藩政時代から残る重要伝統的建造物群保存地区である「中町こみせ通り」をぶらっとお散歩。こみせとは旅籠や呉服屋商や商家の軒を延長して庇をつき出した造り(雁木造り)で、冬の吹雪や積雪から人を守る現在でいうところのアーケードです。
ビッグサイズの杉玉がさがる造り酒屋「中村亀吉酒造」さん。佇まいに威厳と貫禄を感じます。
覗き歩きしていると、津軽系こけしの灯籠2体発見。
ノスタルジックなうえ何とも童心をくすぐる通りであります。ケイドロ遊びのロケーションにピッタリな空間かも。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年7月)
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