前項に引き続き米沢 奥白布の秘湯、新高湯温泉 吾妻屋旅館さんの後編をご紹介します。
吾妻屋旅館さんの内湯(男女各1)は、ひなびた湯治場の面影があり湯情を盛り立ててくれる湯殿であります。お湯の中に消しゴムかすのような湯の花がゆらゆらと舞う効力ありげな湯は、滑らかな湯触りの石膏泉。ジワリジワリと肌に染み入るような浴感があります。
年季のはいった板張りの空間に総ヒバ造りの湯船は、僕がもつ「みちのく秘湯イメージ」にピッタリであります。
宿そばの沢沿いに湧く56℃源泉を直接注がれるのでチョイと熱め。
ひと通り湯巡りした後、夕食までの時間、白布温泉の酒屋「かもしか」さんで購入した「東光」のにごり酒でカンパイ。地元で親しまれている冬期限定のお酒は、さっぱりとした酸味がクセになるナイスガイであります。
夕食は男性スタッフが部屋まで運んでくれます。豚肉と根曲り竹の入った具材たっぷり山菜汁、ワラビのお浸しなど山の宿ならではのラインナップ。
新鮮なイワナはお造りと塩焼きで
しみうま玉こん、
ニシンとウドとお麩の炊合せ
さらに米沢牛までも。味わい深いラインナップで、お酒がすすむゴキゲンな宴となりました。
そして翌朝は菊の花のお浸しが朝食にパッと花を添えます。香りとシャキシャキ感は(もってのほか)のお美味さであります。やさしい味付けの朝食で美味しく頂けました。
ラストは勿の論、「温玉・オン・ザ・ライス」ですね。これができた朝は一日ハッピーです。ご馳走さまでした。
新高湯温泉はスキー場や高山植物の高原として知られる天元台の真下にあり、真冬は雪に覆われるため露天風呂は銀世界へとリノベーション。素晴らしい雪見風呂としても知られています。(写真:館内にあったレトロなポスター)
吾妻屋旅館さんでチェックアウト後、米沢市街へもどり、宿で飲んだ美味しいにごり酒を造る「東光の酒蔵」を見学しました。
「東光」の銘柄で知られる小嶋総本店さんは1597年(慶長二年)創業の上杉藩御用酒屋で、現在まで400余年の歴史をもつ造り酒屋であります。
米と水を原料とした日本酒造りの製造過程を学べる酒造資料館では、6尺桶が立ち並ぶ明治時代の仕込蔵や麹室、そして往時の蔵人が使用していた道具や酒器の展示などを見学できます。帳場のあるエントランスには「東光政宗」と書かれた木彫りの看板、大福帳、電話など往時の商家の備品が展示(写真)
日本酒の製造過程、歴史をたっぷりと見せられた後は、口の中では生唾の分泌が増え、酒を欲する極限状態に陥ります。そして現る「試飲即売場」というこの工程は新手のSMプレイと言えるでしょう。見学後の試飲は格別でした。
「ひやおろし純米吟醸」と「吟醸梅酒」を購入し、自宅配送して頂きました。ひやおろしは米のもつやさしい甘みと丸みのある深い味わいが特徴。そして梅酒にさほど興味のない僕も試飲の際、あまりの美味しさに思わず購入した吟醸梅酒(写真)。この梅酒、純米吟醸粕を使った焼酎に梅を漬け込んで造るという斬新な発想から生まれた繊細な味わいの梅酒であります。吟醸粕の風味香るやさしい甘さがお見事。
酒蔵に素晴らしい言葉がありました。いくつもの繊細な工程で造られる日本酒は日本文化そのもののように思えます。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年11月)
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