未曽有の事態以降、新しい英語が巷で氾濫しました。パンデミックに始まり、ロック・ダウンやオーバー・シュートといった、まるでAC/DCの曲名のみたいもの、さらに「ソーシャルのディスタンス」といった、あたかもアルフィーの新曲みたいなもの、そしてホームステイの経験はなくともステイホームは万人が経験したように思えます。収束したように思われましたが、日々の東京の感染者数を目にすると、胸張って、県をまたいでの旅行はまだまだ先のように思えます。
暗い想像ばかりしがちですが、時には「禍(わざわい)転じて福となす」のことばのようにピンチをチャンスに変え、ハッピーな結果を想像することも大事です。白井貴子の「チャンス」でも聴いて乗り越えようではありませんか。ちょっと古いか・・・。一日もはやく、安心して温泉旅行ができる日を楽しみに更新を続けます。
甲府市は山梨県のほぼ中央部に位置し、さらに甲府盆地ほぼ中央部に街が築かれた県庁所在地であります。武田氏三代の栄華の跡ということもあり、信玄により定められた甲府における禅宗の寺格「甲府五山」や弘法大師の開山といわれる塩沢寺などの史跡が多いことでも知られています。JR甲府駅前にでぇ~んと鎮座する信玄公の銅像はまさに、甲府市のシンボルであります。また甲府盆地は昼夜の温度差が大きく、傾斜が多く、ぶどうの栽培に適した風土のため、固有種である甲州種のぶどうを用いて日本発の国産ワインが誕生しました。明治3年の出来事であります。
そんな甲府市の街の中心部に豊かな温泉が湧くことも温泉通のあいだで知られており、特に銭湯の湯がいいんです。新遊亀温泉もその中のひとつで、住宅地にある昭和感溢れる銭湯です。
入口のタイル使いや硝子ブロック、さらに立体の筆文字看板は昭和そのもの。
新遊亀温泉の湯殿にはL字型の3つに区切った浴槽で、熱め、適温、ぬるめといった感じに温度差をつけています。ローションのような滑らかさがある含食塩-重曹泉は、うっすら飴色に輝くモール泉。湯中には粒状の湯花が舞っていて指でつまんでみると、ゼリー状の感触がありビックリ。
右側奥の槽のライオンの湯口からはアチチな湯が注がれ、左側奥の槽の丸い御影石の湯口からはぬるめの湯が注がれ、左右の湯が混ざらないよう浴槽の縁に高低差をつけ、手前側の槽だけに流れこむギミックが施されています。地味なギミックとはいえ、温度管理に繊細さを感じます。
浴槽のサイズに対して注がれる湯量が多いため浴槽からは常時オーバーフロー状態。ザブザブと湯の流れを全身で感じられる気持ち良さがあります。嗚呼
脱衣場の無駄に多い適応症は見応えがあります。毎日浸かれば医者要らず。
国母温泉は白タイルと白塗りの広々とした湯殿の銭湯で、右側に熱めとぬるめに区切られた浴槽と左に超音波風呂の浴槽それぞれで、自噴するモール泉を堪能できます。
うっすら琥珀色の湯は弱アルカリの含食塩-重曹泉でじわじわ身体をあたためてくれます。
湯殿にはサウナも完備され、サウナの前にある水風呂の浴槽にも浸かってみると、真水ほど冷たくなく、ツルツル感とほどよい冷たさが火照った身体に気持ちイイんです。冷泉と思われるような温泉臭がありました。
扉から露天風呂へぬけられます。塀で囲われ展望はないものの、石組さた充分の大きさが湯壺であります。
内湯よりも色が濃く、ぽつぽつと肌への泡付もあり、湯のいきいきとした新鮮さを感じます。
湯上りには、瓶詰めのコーヒー牛乳、フルーツ牛乳、そしてパイゲンC。脱衣場には昭和レトロなベンチが並ぶ。
大理石風デコラ貼りの脱衣ロッカーには昭和バブル期にリメイクされたものなのか。
ふたつの湯巡りを楽しんだ後、甲府駅から歩いていける距離にある、ワイナリー「サドヤ」を訪問。
大正6年創業のサドヤさんは、チャペルやレストランが併設された、挙式もあげられるワイナリーであります。熟成したワインを造るための地下のセラーを見学できるツアーがあるのですが、次の回が定員にみたしていたので諦め、ワイン・ブティックを暫し見物。
サドヤさんのスパークリングをはじめ、赤、白、ロゼのボトルがラインダンスの如く整列されています。店内の数十種類のワインはすべて試飲が可能ということで、角打ちと洒落込みました。
ブティック内のカウンターで、300円~500円で試飲が可能。スタッフがワイングラスに丁寧に注いでくれます。
頂いた甲府スパークリング。甲府開府500年を記念してサドヤで醸造されたスパークリングワインで、すべての原料が甲府市産でつくられているという。きりっとドライな口当たりのなかにスッキリとした甘みがあります。
敷地内の見本園には赤ワイン用のぶどう品種、カベルネ・ソーヴィヨヨヨヨ~ンとメルローが赤く色づいていました。甲府の銭湯巡りからの、ワイナリーでの角打ちという、この流れはなかなか乙なものでしたよ。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年9月)
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