前項に引き続き、五十沢温泉 ゆもとかんをお送りいたします。ゆもとかんさんには、前項で紹介した混浴の内湯とそこから外に続く大露天風呂とは別に、男女別の浴場もあります。
男湯は白塗りの壁に黒タイルで施された腰壁、浴槽は白タイルという、モノトーン調のシックな湯殿。混浴の内湯と大露天風呂の広々とした湯つぼに対し、7・8人サイズの浴槽に湯量豊富な湯を注ぐため、硫化水素臭や湯触りなどのお湯本来の個性が如実に表れています。湯口はエベッさんが左手でかかえる鯛の口からとうとうと注がれ、右手には飲泉用の升を持っていました。女湯には露天風呂も付いているようです。
ゆもとかんさんの朝食は食堂でいただきます。自家農園でつくられた野菜を使った郷土料理をはじめ、煮魚、玉子焼きなどのご飯好きの、ご飯好きによる、ご飯好きのためのご飯のおともがバイキング形式で頂けます。
さすが米どころ、米をさらに美味しく食べるためのオプションの多さに度肝を抜かれます。
郷土料理のもてなしって、うれしいですね。珍しいものでは、銀葉藻(ぎんばそう)という海藻の味噌づけは、口の中で歯が弾むようなシャキシャキ感が病みつきになる逸品です。
そして魚沼地方で食べられている郷土料理「きりざい」。だいこん、にんじん、野沢菜などを細かく刻んだものを納豆に混ぜて食べるご飯のおとも。
納豆に混ぜ込んだ状態。出された納豆が通常のものよりネバネバが強く、混ぜ甲斐がありました。これをホカホカご販にのせて「いっただっきま~す」。納豆の風味とシャキシャキとした食感が絶妙です。
〆はやっぱりこれっ「オン・ザ・温たま」。いつもの宿の朝食より2杯ほどご飯のおかわりが多くなってしまいました。ごちそうさまでした、大変美味しゅうございました。
ゆもとかんさんから県道を挟んだ200mほど先にある「ゆもとかん旧館」。本来、源泉はこの場所にあり、200m先の現在のゆもとかんにも送られています。
木造2階建ての親しみある佇まい。鄙び具合もゴキゲンです。受付の笑顔が素敵なご婦人が迎えてくれました。
旧館の浴場は小ぶりな内湯(男女別)のみで、昭和感たっぷりなレトロなタイル張りで2面に窓がついた明るい湯殿です。ゆもとかんと同じ源泉の湯ではあるが、巨岩を配した風情ある湯浴みとはまた違い、鄙びた共同浴場の趣きもまたイイものです。
バルブ付きの湯口からジャバジャバ注がれ、源泉が近いためか少し熱めの湯温になっています。
湯殿の窓からも金城山のおおらかな山体を望めます。火照った顔に冷たい風がキモちE~。
旧館は現在でも素泊まりのみでの宿泊も可能で、受付のご婦人に部屋を案内していただきました。古い建物だが清潔感のある館内です。凝った意匠の障子がついた二間つづきの部屋はとても居心地よさげです。素泊まりは一泊3800円ほどと、かなりリーズナブルです。
ゆもとかん、旧館の2ヶ所の浴場で、五十沢の湯を心ゆくまで堪能させて頂きましたが、最後の最後まで気になって仕方なかったのが玄関ロビーのぬいぐるみ風パンダの剥製でした。帰りの際、ひとりの中居さんに思い切って「このパンダ、ホンモノですか」と訊いてみたところ、ニヤリと不敵な笑みを浮べた中居さんは「さあ、どうでしょうね~」と言いながら去っていったのです。なんてミステリアスな宿なんでしょう。どうやら信じるか信じないかは、あなた次第のようです。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2019年3月)
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