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執筆者の写真きい

濁川温泉 新栄館(北海道)p.116


今回は(株)商船三井さんのネットマガジンでも執筆した濁川温泉 新栄館を少し内容を変えて本家ユメグリガホウでもご紹介致します。

南北海道の内浦湾と秀峰駒ケ岳の周囲に位置する森町(もりまち)は農業、漁業及び水産加工業が主な産業で、北海道を代表する駅弁「いかめし」の発祥の地でもあります。JR函館本線の森駅から北西約16km、狗神岳(いぬがみだけ)を源に内浦湾へと注ぐ濁川(にごりかわ)の上流にある濁川温泉。豊かな田園風景が広がる温泉地は太古の火山噴火により形成されたカルデラ盆地で、周辺どこを掘っても温泉が湧くと言われるほどの地熱資源の宝庫でもあります。


開湯が江戸後期とされる濁川温泉は、水田風景の中に宿が2~300m間隔で点在する。その中のひとつ、明治36年開業の新栄館さんは農家を兼業する湯宿。色あせた赤いトタン屋根の建物が大正、昭和と増築を繰り返した本館。パンチの効いた鄙びは芸術的です。


新栄館さんの浴場へは新館の宿泊棟から繋がった本館の廊下を進んだ先の浴舎にある。混浴の湯殿は3つのコンクリート造りの湯壺が2対1のフォーメーションで並ぶ。経年劣化による寂れが絶妙な空間にシビレます。近代感が皆無で昔ながらの湯治場風情が未だバリバリなんです。


逆側からのアングル。3つの湯壺にはうっすら黄褐色の湯が張り、湯壺の縁や床はキャメルカラーの析出物がフルコーティング、源泉成分の濃さが一目瞭然。黒いホースが入った湯壺は湯口が2口もあるのでかなり熱く、あとの2つは適温とややぬるめといった感じ。滑らかな肌触りの湯は仄かにアスファルトのような油臭と軽い塩味を感じる。


湯口は湯殿奥の壁穴から60℃ほどのアチチな源泉を引き、壁沿いにつくられた湯路を流れ各湯壺に注がれる。


湯面ではカルシウムなどの成分が早くも結晶化を始めている。


そして各湯壺の湯尻から床に流れ出る湯は、長年の積み重ねによってできた湯路を通って湯口とは反対の壁穴へ排湯されるシンプルなギミックが施されている。まさに放流式の源泉かけ流しシステム。


3つの湯尻からの湯が集合し、最後は壁穴へ排出。給・排水管だと管に析出物がこびりつき詰まりの原因になるのでこのシステムが最適だと思われる。


浴舎のすぐ外にある源泉槽。動力なしの高低差だけで湯殿の浴槽に注がれます。


常時60℃の源泉が湧出している。


混浴以外に女性専用の浴場が新館にある。打って変わって、こちらは白タイル張りの近代的なやつ。


5・6人サイズの浴槽で注入量も多いせいか、湯の色や香りなどの本来の個性が混浴の湯よりもよくでている。


浴槽の縁の御影石も白タイルの床も析出物でこのとおり


夕食時にビール片手に登場する新栄館さんのご主人はネルのウエスタンシャツがカッチョイイ、御年87歳。色んな話をしてくださり、ゴキゲンな時間を過ごすことができました。畑仕事のため玄関から20mほど先のビニールハウスに愛車のハーレーで乗りつける親爺さん、ステキです。


ハーレーはカタカナ表記でダヴィッドソンは英語表記だが、スペルが危うい。


翌朝チェックアウト後、親爺さんに近くのバス停まで車で送ってもらう際、濁川の源流、狗神岳が望めるポイントまで車で連れてってくれた。清濁併せ吞む人柄と、酒を飲むと時おり肩をすぼめて「にひひひっ」と笑うお茶目な親爺さん、ありがとうございました。いつまでもお達者で。道南には半農半湯宿の熱い湯が湧いています。(訪2018年5月)

今年はこれで最後の更新とさせていただきます。今年も一年、お付き合い頂きありがとうございました。時節柄お忙しい事と存じますが、くれぐれも体調など崩されませんよう、ご自愛ください。そして輝かしい新年をお迎え下さい。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。Merry Christmas to you!

2018年 12月20日

ユメグリガホウ きい

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