南北海道の内浦湾をへだてて室蘭市と対する森町(もりまち)は秀峰駒ケ岳の北西麓にする。16世紀初頭、函館・江差(えさし)の和人がニシン漁のため定住したのが始まりで明治時代には函館から札幌を結ぶ中継地として重要視されていたという。弧を描いた天然の噴火湾ではホタテ、ボタンエビ、スケトウダラ、毛ガニなどの新鮮な海の幸が豊富で、さらに北海道を代表するあの駅弁「いかめし」は森町が発祥の地なんです。
そんな森町から北西へ16km、濁川の上流を進むと、深い森で覆われた渓谷が突然開け、豊かな田園風景が広がる中に濁川温泉があります。濁川温泉は江戸時代に村の役人、加賀谷半左衛門が幕府に温泉場の開設を出願したのが始まりといわれています。その起源となったといわれる濁川温泉の元湯、「にこりの湯」は元湯と呼ばれる風格は皆無で緑の景観に溶け込むような平屋造りの佇まい。ミントグリーンの屋根に矢切部分はウッディに装飾されたカワイイ外観です。
森駅から望む秀峰駒ケ岳の姿
駅前の「いかめし」を売る柴田商店。レトロな外観に「いかめし」の看板、幟、暖簾、ベンチらのアピールが凄いんです。
にこりの湯さんは以前まで、宿泊のできる湯宿でしたが、現在は日帰り入浴専用施設として営業しています。白塗り、白タイル張りの清々しい湯殿です。手前から奥に伸びる半ひょうたん型の浴槽は低温・中温・高温の3つの槽に区切られ、湯口のある奥の槽が45~6℃とかなり熱めで、手前に向かって湯温が下がる仕組みとなっている。ドスの効いたウグイス色の湯は鉄分を多く含んだ塩化土類-重曹泉。肌に優しい中性の湯はすこぶる温まります。
油臭のある湯は鉄分が多いため白いタイルはこのとおり
湯尻の排水口の析出物は造形美を成している
よく身体を温め、皮膚病、アレルギーに定評がある湯からはパワーを頂けます
湯殿奥の扉から露天風呂に抜けられます。屋根付きで目隠しのため、よしずで囲われているが陽が差す明るい空間なのか圧迫感はない。コンクリート造りの岩が配された湯壺のまわりは美しいサンドカラーの析出物に染まる。
サンドカラーの析出物はアメリカ・ニューメキシコ州・サンタフェのアドビ建築を彷彿とさせる美しい色。サンタフェ行ったことないけどぉ・・・。
屋根とよしずの隙間には防虫ネットが巻かれているので夏場のアブ・ブヨ対策は万全です
帰りに常連のおば様2人に「ここのお湯は一番いいのよ」と僕に熱く絶賛していたことや、女将さんのおっとりとした話し方に元湯としての風格を感じとることができました。みんなにっこり、にこりの湯にほっこりさせられました。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。(訪2018年5月)