前項の黒薙温泉に引き続き「トロッコに乗ってルンルン湯巡り」をお送りします。黒薙の湯を堪能した後、再び600mの山道を歩いて黒薙駅へ。二湯目の鐘釣(かねつり)温泉へ向かうためトロッコ列車で鐘釣駅へ。窓がない普通客車に乗り込む。火照った身には丁度いいヒンヤリとした風を受けながら深いV字峡谷を縫うように走るトロッコ列車。車内では黒部峡谷の見どころを富山県出身の女優、室井滋さんによるゴキゲンな車内放送で案内してくれる。
鐘釣駅から歩くこと数分、真紅でロッジ風な佇まいの釣鐘温泉旅館に到着
バクザン先生を思わせる、熱いパッションを感じる書がかかる
こちらの宿は内湯がなく宿から黒部川に下りていくと河原に温泉が自然湧出している場所があり、その湯溜まりとなった幾つかの野湯で湯浴みができるというなんとも乙なもの。
解放的な野湯が現る
しかし8時半から16時までは日帰り入浴を無料開放しており足湯を楽しむ観光客が多く、囲いも何もない野湯に全裸になるのは勇気がいるもの。だが簡素な脱衣場を備えた洞窟風の「岩風呂」がありそこで湯浴みができた。
洞窟風の「岩風呂」は4.・5人サイズの湯壺で、一番奥の壁から流れるように湯が自然湧出しており湧き立てピチピチの湯を味わえるのだ。さらに湧き出る湯が適温ということにも感動。無味でサラリとした透明な湯は恐らく単純泉と思われる。洞窟内に差し込む太陽光が湯面にあたるとブルーグレーのような美しい色を放つ。これは湯底の砂が石灰成分を含んでいるためだろう。洞窟風になっているため蒸気がこもり軽いスチームサウナ状態で浸かっていない顔からも汗が噴き出す。この素晴らしいロケーションでの湯浴みはやはり宿泊し16時から翌朝8時半までの貸し切り感で味わうことが醍醐味であろう。
欅平温泉 猿飛山荘
鐘釣の湯を堪能し再び鐘釣駅から終点、欅平へ移動。駅から5分ほど黒部川に下りていった場所に3湯目となる赤いテントシートに定食の献立が書かれた昭和感満点のゴキゲンな佇まいの猿飛山荘さんは食事処としても営業する湯宿。
骨組みを単管パイプとクランプで組んだテントシートで囲われた露天風呂。屋根のテントシートにはお猿さんが湯浴みするイラストが。石組された3・4人サイズの湯壺に白濁した湯が張る。仄かに硫化水素臭のあるやさしい湯は2.5km先の上流で湧く祖母谷温泉からの引き湯だ。黒部の渓谷を俯瞰で見ることができる手造り感のあるステキな露天風呂でした。
名剣温泉
猿飛山荘へ行くため川に下りた分、歩道まで登り返し、祖母谷方面へ。深い渓谷に架かる朱塗りの奥鐘橋を渡り、
人を飲み込むようにみえる人喰岩を経て15分ほどで4湯目の渓谷の秘湯、名剣温泉に辿り着く
「日本秘湯を守る会」発足当時からの宿で欅平周辺の散策がてら立ち寄り湯をする客で賑わう
立ち寄り客は露天風呂のみで扇型に石組みされた小ぶりな湯壺で湯は仄かに硫化水素臭ありの単純硫黄泉。こちらも猿飛山荘と同じ祖母谷温泉からの引き湯が注がれるが湯壺の湯に白濁はなく透明。開放感ある渓谷の景観が実に爽快である。
次回、「トロッコに乗ってルンルン湯巡り」最終回、「祖母谷温泉」をお送りします。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。