小浜温泉は島原半島の西に位置し、橘湾が広がる海辺に佇む温泉街。開湯は江戸時代、町内だけでも30カ所もの源泉があり温度も100℃近く、湧出量、熱量共に全国でも屈指の名湯。小浜温泉はJR諫早駅よりバスで50分ほど。小浜温泉バスターミナルから海沿いを走る国道の一本裏手の通りを15分ほど歩いた小高い丘に地元の人が「おたっしゃん湯」と呼ぶ脇浜温泉浴場がある。玄関前には藤棚がかかるイカした木造の外観だ。
昔ながらの番台でお金を払うと、番台の親爺さんがぼくをよそ者だと感じたのか「どっから来たと?」と聞かれ「東京です」とぼく。するとそのやりとりを聞いていた地元の常連らしき親爺さんがイチモツぶら下げてヘラヘラ笑いながら「ここは何で知ったと?なんかに載っとったと?」と聞かれ、温泉本での掲載で知った事を伝えるとヘラヘラした親爺さんが番台の親爺さんに向かってさらにヘラヘラ笑いながら、「あんまり宣伝せんといてぇ、あんまりたくさん来たらオレら来れんごとなるけん」と軽いジョークで歓迎を受けた。
レトロで木製の脱衣ロッカーは指を戸穴に突っ込んで開ける渋いやつ。
白塗りの壁、ブルーに塗られた天井、広々とした爽快な湯殿。天井には大きく湯気抜きが取られ、湯殿の真ん中にコンクリート造りの10人サイズの浴槽が鎮座する。浴槽は真ん中で区切られ内側はタイル貼り。湯口は真ん中で区切られた縁の上にあり塩ビ管からシャバッシャバッと音をたてて吐き出され、縁の上を伝って両サイドに注がれる。そのため浴槽は区切られているものの「熱め」と「ぬるめ」に分かれているわけではなく浴槽の真ん中あたりが熱くなっている。湯は海水のような濁りがある食塩泉。飲泉するとコクのある塩味で意外と旨みを感じる。四方の壁に向かって床が緩やかに下がっているため浴槽からオーバーフローした湯はサイドに流れる造りになっている。天井が高いため時おり女湯からのはなし声なんかも反響しより湯情感がアップする。
昭和12年におたつさんという方が創業したことから「おたっしゃん湯」と呼ばれるようになったそうです。昔は内湯を持たない宿もあったので宿泊客はこの浴場を利用していたそうです。昭和を色濃く残す鄙びた浴場、いつまでも残してもらいたいです。では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。