島根県のほぼ中央、国立公園三瓶山(さんべさん)の周辺には個性に富んだ小さな温泉地が点在し、これらを総称して三瓶温泉郷と呼ぶ。千原温泉もそのうちの一つで三瓶山の南東の沢谷エリアにあり江の川支流の千原川沿いにある静かな温泉地。
千原湯谷湯治場(ちはらゆんだにとうじば)は千原温泉の唯一の宿で以前は、やけど、切り傷、皮膚病などの療養目的の湯治専用の宿であったが、今では日帰り入浴のみで宿泊は行っていない。歴史感じる赤い石州瓦の情緒あふれる外観は川に沿って棟が続き、浴室棟は一番奥にある。
湯殿には4・5人サイズのコンクリート造りの浴槽が一つ。年季の入った無駄のないつくりはまさに燻し銀といったところ。浴槽の底から源泉が自然湧出しているため黄金色の湯面には湯が沸騰しているか如くプクプクと気泡が上がる。湯は34℃とかなり低い温度だが浸かってみると想像していたよりも温かく感じる。これに30分から1時間ほどゆっくり浸かる客がほとんどなので狭い浴槽では先客の親爺さんと話が弾む。目を閉じて湯に身を委ねていると底板の間から湧き上る気泡が、ぼくのデリケートゾーンから背中をなぞり、湯面で弾ける。まるで鳥の羽根で肌をなぞられるような絶妙なセクシー&フェザータッチが堪らない。さらに気泡が湯面で弾ける時の「ポヨン」「ピヨン」という音にも癒される。湯底から湧き出たばかりの濃厚な湯はサラリとした肌触りで、炭酸味と鉄臭、塩味があり少し調整すれば麺のつけ汁として使えそうな味・・・? 湯温が34℃と低いため10月から6月までは、湯殿にある五右衛門風呂に源泉を薪で沸かした湯に上がり湯として身体を温めるのだ。明治開湯の歴史ある湯は温度こそ低いが熱いパッションを感じる一湯でした。 では皆さん、健康で素敵な湯巡りを。